日本代表 4-3 ガーナ代表
第1に、今回の日本代表の勝因は、1-3になった時点でガーナ代表の足が止まってしまったことだと思いますが、これはガーナ代表のコンディショニングの問題(直前の9/6にW杯出場権の懸かった試合がガーナの首都アクラであった)と、2点差になったことによる気の緩み(前半だけで4人を代えたとは云え、あれほど破壊的な攻撃力を持ちながら、たかだが2点差で気が緩む辺りに、“アフリカの強豪”と“世界の強豪<W杯優勝経験国>”の、チームとしての経験値の差を感じるのですが)、そして直後の自分たちのミス(ペナルティエリア近辺で長友選手にボールを奪われたイージーミス)による失点で、思考停止状態に陥ってしまったことが大きな要因だと思います。しかし、そういう切り口は余り建設的とは思えない(どんな問題もコンディショニングや精神面、あるいは決定力のせいにして済ますことが出来る。それぞれ、もちろんとても重要なのですが、それはまた別の話)ので、今回も戦術的な切り口から分析したいと思います。
戦術的に言うと、ガーナ代表の疲労の原因は、日本代表のハイテンポのサッカーに序盤から付き合ってしまったことだと思われます。これは、イビツァ・オシム監督時代のジェフ千葉の試合でも良く見られたのですが、走り合いになったら絶対に負けない強さが当時のジェフにはありました。それは、訓練の賜物でもあったのですが、要は「走るチーム」と「走らされるチーム」の疲労の質の違いであるとも云えます。このサッカーが現在の日本代表が目指しているものだと思いますが、実際のところ、オシム監督が退任(代表に転任)した年のジェフの成績は、それほど芳しいものではありませんでした(オシム監督退任時5位、シーズン11位)。それは、ジェフのサッカーが研究された結果、相手にベタ引きされてしまうことが多くなってしまったからでした。(さらに当時のジェフは3or2バックで戦っていたので、サイドの高い位置に選手を置かれると弱かった)
今回の対戦相手だったガーナ代表は良くも悪くもピュアなサッカーを見せ、その姿勢には好感を持ちましたが、いざW杯となった時に、対戦相手が今回のガーナ代表のようにピュアなサッカー(相手の長所を潰そうとしないサッカー)をしてくれるとは限りません。むしろ、徹底的に研究されると考えた方が良いでしょう。そして、現在の日本代表のサッカーは、とても対策が立て易いサッカーだとも考えられるのです。
また、今回の試合では後半に連続して点が入った訳ですが、序盤のチャンスでは守備選手の踏ん張りが効く(最後の一歩が出る)ので、チャンスになってもゴールになる可能性は比較的低く、試合の終盤になると守備選手と攻撃選手の疲労度の差(一般的に、交代選手は攻撃的な選手が使われることが多いですし、攻撃の選手はサボることが出来ますが、守備の選手がサボることは許されない。もちろん、今の日本のサッカーの考え方とは違いますが、一般論で)によって、チャンスがゴールに結びつく可能性が比較的高くなる。日本代表の3点目と4点目は、まさにそういった形(守備選手がゴールした選手を離してしまった)から生まれたものでした。この事実は、日本代表にとってはマイナス要因になるかも知れません。というのも、今回の試合では相手の足が止まってしまったことにより、日本代表の側に終盤のゴールが集中した訳ですが、現在の日本代表チームはあくまで序盤に先制することが大前提の筈だからです。今回の試合でも、序盤の先制点奪取に失敗をしたことで、相手の逆襲(比較的早い時間でしたが)を食らい先制を許しました。そして、その結果、日本代表のDFラインはより高く上げざるを得なくなり、後半の序盤には連続して失点を喫した訳です。ここまでは、予想されたシナリオ通りの結果でした。この後、先述の理由(+選手交代によるガーナ側の自滅的な混乱)と、交代選手(稲本、玉田、本田)の奮起によって逆転に成功した訳ですが、日本代表が試合前に描いたシナリオでは、あくまで先制点が前提だった筈です。この逆転勝利によって、自分たちの欠点を覆い隠すようなことがあってはなりません。
そして、もうひとつ露呈した欠点は、日本代表が志向しようとしているサッカーと、センターバック(中澤・闘莉王)の適性に矛盾が生じていることです。監督が気付いているかどうかは知りませんが、現代のサッカー(特に欧州)で背が高く比較的鈍重な選手(悪口ではなくタイプの話、例えばヴィディッチやテリー)が重用されているのは、欧州のサッカーのラインが基本的に低いからです(何故低いかは以前の記事で書きました)。それに対して、現在の日本代表のサッカーはラインが高いので、小柄でも瞬発力に長けたタイプのDF(プジョルやカンナヴァロ、あるいは坪井のような)が適正な筈です。何故、中澤選手や闘莉王選手に拘るのかは分かりませんが(あるいはセットプレー対策かも知れない)、今回の試合では、彼らの守備は明らかにpoorでした(ガーナ選手の身体能力云々は付加的な価値を持つに過ぎません。あれだけ高いラインならば、それなりに足の早いFWならば攻略可能だからです)。今まで招集してきたセンターバックを見ても、ユーティリティ・プレーヤーの阿部と今野を除けば、背が高くヘディングに強い選手がほとんど(恐らく100%)なので、監督自身がこの戦術に対する理解を欠いているのではないかと、僕は思っています。むしろ、背の高い選手を使いたい(あるいは必要上使わざるを得ない)のであれば、ラインを低くして現実的なサッカーを志向するべきです。それが論理というものですし、世界のサッカーの潮流は、そうして動いてきたのです。
前回の記事で指摘した日本代表の足が止まるということに関して云えば、今回の試合では日本代表の足が止まったようには見えなかったかも知れませんが、実際には守備陣(特にセンターバック)は、失点を喫したシーンの近辺ではアップアップの状態でした。ここでガーナ代表が攻撃の手を緩めてくれたため(また、ガーナ代表の足が先に止まったため、相対的に日本代表がボールを拾えるようになったため)、その欠点は露呈しませんでしたが、その傾向は明らかに見えました。ただ、当然のことながら交代選手、そして長友選手(おそらく、今の日本で1番スタミナのある選手)に関しては、その限りではありませんでした。逆転は彼らが呼びこんだものだと云えるでしょう。
なにはともあれ、スペクタルな攻防の末の逆転勝利は、素晴らしいものでしたし、そこは素直に喜び、かつ選手におめでとうを言いたいです。ただ、それを踏まえた上でなお、苦言を呈させて頂きました。
なにはともあれ、スペクタルな攻防の末の逆転勝利は、素晴らしいものでしたし、そこは素直に喜び、かつ選手におめでとうを言いたいです。ただ、それを踏まえた上でなお、苦言を呈させて頂きました。