2009年8月19日。イングランド・プレミアリーグ第2節。3連覇中のマンチェスター・ユナイテッドは昇格組のバーンリーFCにアウェイで0-1で敗れた。2試合トータルでゴール数は僅かに1。C・ロナウドの後釜として期待されたバレンシアは全くチームにフィットしておらず、個人技を見せる機会もほぼ無いに等しい。
シーズン開幕前から不思議に思っていたことがある。C・ロナウドとテヴェスを放出したマンチェスターUは、バレンシアとオーウェンを獲得した時点で早々に補強終了宣言。これを好意的に捉えた解説者が多かったのだ。
たとえば東本貢司氏は↓
ークリスティアーノのような「いるといないとでは戦術的に違いが出る」タイプとは違って、むしろ使い勝手の良さを考えれば、スピードはクリスティアーノに勝るとも劣らず、若くて生きがいいのは保証済み。ー
ークリスティアーノのような「いるといないとでは戦術的に違いが出る」タイプとは違って、むしろ使い勝手の良さを考えれば、スピードはクリスティアーノに勝るとも劣らず、若くて生きがいいのは保証済み。ー
と、バレンシアの補強を好意的に捉えている。しかし、ここ2試合で見た限り、バレンシアは使い勝手が良いどころではない。まったくチームから浮き上がっていて、右サイドをウロウロするばかり。ボールを持っても直ぐロストするため、初戦の途中からスコールズなどは、あからさまにバレンシアにパスを出さなくなった。見た所、クリスティアーノどころではない、全く戦術を理解していない選手のように感じた。
また、後藤健生氏は↓
ー僕も日ごろから「財力にあかせて強化する風潮は、まったくスポーツ的でない」と思っている。フットボールクラブの本当のあり方としては、下部組織から育った生え抜きを主体にすべきだ。もちろん、移籍で大物を獲得するのは悪いことではないが、それはあくまでも「補強」であるべきだ。たとえば、昨季のマンU。守備の安定感、全員のハードワークをベースにしたすばらしいチームで、チャンピオンズリーグのタイトルこそ失ったが、シーズンを通して世界最強だったことは間違いない。だが、「しぶとく守ってC・ロナウドの一発で勝つ」といった、「無粋な」勝ち方をするところが嫌いだった。C・ロナウドは、世界のフットボール界の金権体質の象徴のようにも見えた。だから、今シーズンは、C・ロナウドがいなくなり(金権体質という意味では、最もふさわしいクラブに移籍した)、ルーニーという「ハードワークする天才」中心のチームを作るということで、かなり期待しているのである。ー
ー僕も日ごろから「財力にあかせて強化する風潮は、まったくスポーツ的でない」と思っている。フットボールクラブの本当のあり方としては、下部組織から育った生え抜きを主体にすべきだ。もちろん、移籍で大物を獲得するのは悪いことではないが、それはあくまでも「補強」であるべきだ。たとえば、昨季のマンU。守備の安定感、全員のハードワークをベースにしたすばらしいチームで、チャンピオンズリーグのタイトルこそ失ったが、シーズンを通して世界最強だったことは間違いない。だが、「しぶとく守ってC・ロナウドの一発で勝つ」といった、「無粋な」勝ち方をするところが嫌いだった。C・ロナウドは、世界のフットボール界の金権体質の象徴のようにも見えた。だから、今シーズンは、C・ロナウドがいなくなり(金権体質という意味では、最もふさわしいクラブに移籍した)、ルーニーという「ハードワークする天才」中心のチームを作るということで、かなり期待しているのである。ー
この文章は、全く不可解だったので、長く引用させて頂いた。一見すると正論を言っているように思える。しかし、ルーニーは2004年にマンUがエヴァートンから2000万~3000万ポンド(日本円にして約30億~45億)で強奪した選手では無かったか。今回のロナウドの移籍金には匹敵しないが、ティーンだった選手に払う金額としては莫大なものである。つまり、マンUも同じようなことをやっているのだ。そう考えると、後藤健生氏の文章は明らかな論理矛盾で、同国の選手なら強奪しても良いということになってしまう。ハッキリ言って、この文章はC・ロナウドへの単なる個人的嫌悪感をぶつけているだけのような印象もある。
彼の言う所の「ハードワークする天才」。たしかにルーニーはハードワークをするし、それはチームにとって物凄く大きな助けになっている。ただ、ハードワークをするからこそ、ルーニーは毎年10点程度しか獲れないとも言えるのだ。彼がゴール前で集中力を欠いたようなシュートを放つのは、疲労によるものとも考えられる。一方、「ハードワークしない(サボる)天才」だったC・ロナウドは批判をされつつも、ここ数シーズンは年間20点近く(07-08シーズンは31点)を稼いでいた。もちろん、フリーキッカーでもありPKキッカーでもあるから一概に比較は出来ないが、サイドアタッカーの数字としては驚異的だ。この両者を比較して、どちらがよりフットボーラーとして優れているかを論じる積もりはない。むしろ逆だ。要は、そのような比較は無意味であり、それぞれのやり方でチームに貢献できれば、それで良いではないか。ロナウドのやり方を不必要(あるいは不愉快)に感じた人間が多かったのかも知れないが、彼の在籍中にチームは3連覇を果たしている。現在のマンUに必要なのは何であるか?下位チーム相手に1-0/0-1。答えはシンプルだろう。
また、東本氏も後藤氏も長期論と短期論を混同しているような節が見受けられる。肥大化するマーケットに警鐘を鳴らし、自立採算の方向性を模索する。育成を重視して、下部組織出身の選手を主体にチームを編成する。これ自体は至極まっとうな意見で異論はない。ただ、それは長々期を見据えた戦略論だ。こと、今シーズンの話に限ればマンUの補強は明らかに失敗だ。理由は単純で、120億円(8000万ポンド)の選手を放出し、代わりに入ったのは24億円(1600万ポンド)の選手。しかも、ここ2試合を見る限りでは、24億円の価値があるようには、とても見えない選手なのだ。マイケル・オーウェンの獲得にしても、彼は明らかにテヴェスの穴埋めであり(埋められるかどうかは別として)、ロナウドの穴埋めではない。マンUは3連覇を果たした昨シーズンの序盤戦も苦戦したが、それはルーニーの負傷や、C・ロナウドの出場停止などで、前線の選手が満足に揃わなかったことに一因がある。翻って、今シーズンの序盤に前線の選手で欠けている選手はいない。唯一、ナニが負傷をしているが、ナニが怪我しているかどうかなど、昨年までだったら気にしただろうか?これが今のマンUの現状であり、ルーニーやC・ロナウドを欠いていた昨シーズンの序盤とは違い、戦力が整えば上昇気流に乗るというような希望を、今シーズンは持てないのだ。
断っておくが、彼らは長年フットボールに携わっており、日本の解説者の中では、自らの見解もしっかりと持った、まともな解説者の部類に入ると思っている。しかし、彼らのようなまともな解説者ですら、論理に破綻をきたすようなことを平然と書いているのが、日本サッカー界の現状であり、酷い解説者の部類になると、戦術のセの字も知らないのではないかと思えるようなところがある。
君たちは日本人だろう。消費社会の王として生きてきたのではなかったか。フットボールの世界だけが、そこから免れ得ると考えるのは、あまりにも自己中心的で滑稽な話ではないか。もちろん、フットボールの未来に警鐘を鳴らすのも良いだろう、金権的な考え方に嫌悪感を持つのも良いだろう。だが、良い選手を集めるのはフットボールの基本だ。それぞれのやり方に違いはあるとは言ってもだ。理想を語るのも良いが、それによって自分の目を曇らせてはならない。
*注:レートは1ポンド=150円で計算
2009/8/20 flowinvain記
出典:
スポーツナビ
東本貢司の「プレミアム・コラム」2009年7月16日~シティーとレアルの影に隠れたユナイテッドの思惑~
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/0910/england/text/200907150002-spnavi.html
スポーツナビ
東本貢司の「プレミアム・コラム」2009年7月16日~シティーとレアルの影に隠れたユナイテッドの思惑~
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/eusoccer/0910/england/text/200907150002-spnavi.html
J SPORTS
【後藤健生コラム】2009年8月19日~C・ロナウドが抜けたマンチェスターU~
http://www.jsports.co.jp/press/column/article/N2009081920005802.html
【後藤健生コラム】2009年8月19日~C・ロナウドが抜けたマンチェスターU~
http://www.jsports.co.jp/press/column/article/N2009081920005802.html