| 赤白の旗に透ける春の夕日。エミレーツ・スタジアム。試合開始後わずか8分。一体全体、何が起こったのか。ただ滑っただけ。それだけの筈だった。前節は素晴らしい働きを見せた19歳ギブス。ただ滑っただけ。それでも、彼がこの瞬間を忘れることは生涯ないだろう。頭に触れた芝の感触。目の前を横切っていくボール。頭上をパク・チソンが越えていく。彼が何よりも大切に思っていた筈のボールは、いとも簡単にキーパーの上を越えた。振り仰いだロンドンの空。0-1。アウェイゴール。アーセナルに必要なのは3点になった。それは、ひとつの破局の光景だった。 |
| 周囲と隔絶するかのようにトップに張ったロナウドは、柔らかい接触で転んだ。ワザとかどうか。ゴールから35m。直接FKで飛んだシュートは、重い重い結果をもたらした。凄まじい威力。ショッキングなオープニング。時計は未だ11分。0-2。必要なのは4点。もはや絶望的だった。 |
| 50分後に訪れたゴールは美しいだけのゴールだった。そして、それは絶望だった。絵に描いたようなカウンターは、ロナウド、パク、ルーニーと繋がり、ロナウドがゴール。0-3。スタジアムをあとにするサポーター。それは、絶望だった。 |
| アーセナルがただひとつ奪ったゴール。それは、もうひとつの絶望だった。PK。レッドカード。それは、CLリーグの決勝でプレイしたいというフレッチャーの夢に対する絶望だった。ボールに触れたフレッチャーのかかとを、レフェリーが見ていれば起こらない筈の絶望だった。それでも、彼は何も言わずに立ち去った。ただ悲しげな顔をして、立ち去った。それは、美しい姿だった。僕らは、万雷の拍手を持って見送ろう。今年のCL決勝に立たない英雄の姿を。僕らの大好きなフレッチャーを。 |
| 試合は終わった。いくつかの光景を心に残して。マンチェスター・ユナイテッド決勝進出。 |
CL準決勝2ndleg
アーセナル 1
マンチェスターU 3