少年が住んでいた場所は蝉が多かった。
ある日、従兄弟が遊びに来て一緒に蝉を採った。
少年は嬉しくて、2匹の蝉を薄い緑色の虫籠に入れ、
次の日の保育園に持って行った。
少年は友人の子に自慢気にそれを見せた。
友人の子は、羨ましそうに見た後、
おもむろに虫籠の蓋を開けた。
蝉は飛んで行った。
友人の子に悪意は無かったであろう。
ただ、蓋を開ければ蝉が逃げるという
理解が無かっただけなのだ。
少年は友人の子に怒ってみせたが、
本当の所、それはどうでも良かった。
少年の心には、窓から空高く飛んで行った
二匹の蝉が、深く刻み込まれた。
大人になった今も少年は思い出すのだ。
あの夏の日、眩しい太陽に向かって
まっすぐ飛んで行った二匹の蝉の姿を・・・