「二つの声」
朝
たれか聞くらむ朝の声
眠と夢を破りいで
彩なす雲にうちのりて
よろづの鳥に歌はれつ
天のかなたにあらはれて
東の空に光あり
そこに時あり始あり
そこに道あり力あり
そこに色あり詞あり
そこに声あり命あり
そこに名ありとうたいつゝ
みそらにあがり地にかけり
のこんの星ともろともに
光のうちに朝ぞ隠るゝ
暮
たれか聞くらむ暮の声
霞の翼 雲の帯
煙の衣 露の袖
つかれてなやむあらそひを
闇のかなたに投げ入れて
夜の使の蝙蝠の
飛ぶ間も声のをやみなく
こゝに影あり迷あり
こゝに夢あり眠あり
こゝに闇あり休息あり
こゝに永きあり遠きあり
こゝに死ありとうたひつゝ
草木にいこひ野にあゆみ
かなたに落つる日とともに
色なき闇に暮ぞ隠るゝ
島崎藤村(1872-1943)

詩人特集第4回は「島崎藤村」です。
若き頃は浪漫派詩人として名を上げ、
後に自然主義作家として大成しました。
ここに載せた詩は若き日の藤村が編んだ
処女詩集「若菜集」に収録されています。
処女詩集「若菜集」に収録されています。
僕は純文学にはあまり興味が無く、
藤村も読んだことはありませんでした。
藤村も読んだことはありませんでした。
ある時、ふと藤村の詩集を手にとって見ると
そこに表現された若い感性は僕の藤村観を覆し、
その詩の世界に魅かれるようになりました。
そこに表現された若い感性は僕の藤村観を覆し、
その詩の世界に魅かれるようになりました。