状況説明が終わり、夫が帰宅した。

『今回は、もうダメかと思ったよ。

死ななくてよかった』

と、去り際に言っていた。


2日前の面会で、私と筆談した用紙を、看護師がコピーしてくれたようだ。

病院を出てすぐに、その用紙を見返した。

そしたら、我慢していたものが溢れてきて、その場でへたり込んで、自分でも驚く程泣いた。

と、退院後に笑いながら話してくれた。

感情の起伏の少ない穏やかな夫の、そんな姿を想像し、矛先のわからない怒りが込み上げた。


コロナ禍なので、病院からの面会許可は1人だけ。


『死にかけた娘に会わせないなんて』

父は落胆していたようだ。

面会できないのに、家を飛び出して、数時間かかる病院へ向かったと。


スマホを触ることもできない娘に母は、何百通ものメッセージを送り、着信履歴を埋めていた。


義母は慌てて、病院に駆けつけた。

動揺して違う病院へ行ってしまったらしい。


私の家族はみんな、基本的には穏やかで優しい。

何が起きても、大抵のことは仕方ないと受け入れる。


『その病院、大丈夫なの?』

我慢や不信感を押し殺し、家族の苦悩は続いた。