車を走らせる程に
どんどん緑が深くなっていき、
人工物よりも自然の量が多くなる。

こっちの方が
普段暮らしてる人間界よりも親和性が高いと、
カラダがホッと緩んでいくのがわかる。

里帰りしたような、安心感。



前方の大きなトラックが
坂道をずっと時速30kmくらいで運転している。

運転席の旦那さんはイライラし始めたけど、
こういう、
何か知らんけど進まない時は、
「何かの調整が入ってる」時
だと、
ワタシは知ってる。


(ずっと一緒にいる彼も、もう知ってるハズなんだけど。
こういう時に自分で思い出すコトは
まだたまにしかない。)


車窓には、水の流れと
山肌に大きな岩も現れだした。

緑と水と岩の組み合わせは、大好物。

ノロノロ運転は、
好物を堪能するには最適だ。


自然の細かな造りにはいつも驚嘆する。

どうしてこんなに細かい部分まで
こんなに美しく作り込んでしまえるの!
と、ワタシの内側で歓声があがる。

そして、ワタシも
ワタシの世界を、
隅々まで細やかに
美しく創りたいのだなと、わかる。



トラックがやっと左にウィンカーを出し、
それを追い越して
目的地へ向かってスピードを上げる。

雨があがってる。




秩父駅周辺は、
昔ながらの趣きを残した町並みで、

車をパーキングに停め、歩くと
植栽がキレイに手入れされた民家の2階から
三味線の音が聞こえた。

空気を伝ってカラダに届く生の音の振動に、
普段音楽と言えば
スピーカーから聞こえるモノばかりに
なってるんだと気づく。

音を奏でて、振動を浴びるのは
楽しくて気持ちが良いだろうなと、
何か楽器を始めてみたい気分になる。


目的地は住宅街の中にあった。

敷地に入るとすぐの大きな木の根本が
空洞になっていて、
そこに木彫りの像が鎮座している。

龍に乗る、優雅な観音。

あぁ、この方だったのか
という感覚が、ポツンと落ちてきた。

15年くらい前から、
龍に乗ったこの美しい存在は
名前は色々と異なるけれど、
ワタシの世界に登場するようになった。

仏や神の詳しいことは知らない。
ただ、ワタシにとっては、
馴染み深いシンボルだ。

呼んでくれまして、どうもありがとうと
挨拶をする。

躍動する龍や
たなびく衣とは真逆の、
深く静かなお顔。

幾枚か写真を撮らせてもらう。

木の横の龍神池は本当に澄んだ水で、
雨上がりの蒸し暑さの中、
目に涼しい。


さて、境内の奥に進もう。



自分の何倍も大きな木に包まれて、
キレイな水の横に佇む。うらやまし。