とにかく大竹しのぶさんが凄かった。
ほかのどんな形容詞でもなく、「凄い」が一番ふさわしい。
「あたしが歌うときは、あたしを出すんだ。全部まるごと」
そのことばどおりでした。


Andante


観劇したのは
1月16日19時(初日)、28日14時、30日19時、2月2日16時、13日14時(楽)

Andante

Andante

Andante
↑初日は寒くてガラスが曇ってました。


正直に言うと、わたしはこれまで大竹さんを苦手に思っていて
このブログの出演作の感想文 でも感想らしい感想を書いてません。
「ピアフ」も初演時、絶賛の声を耳にしてもまったく食指が動かず。
今回も藤岡くんが出演してなければ観たかどうか。
だから、大竹ピアフと出会えたのは藤岡くんのおかげ。
ありがとう!!


大竹さんのピアフは、「憑依した」なんてものではなく、ピアフそのもの。
ありのままの自分に正直に生きたピアフの人生そのものを
「これがあたし(ピアフ)だ」と言わんばかりに観る者につきつける。
実際のピアフはもっと歌がうまいとか、そんなことはもうどうでもよくなってしまう。
そして、それと矛盾するようだけれど、大竹しのぶそのものでもある。


初日前、映画や舞台で共演した阿部寛氏が大竹さんのことを
「天才といわれるけど、とても努力をされる人だ」と語っているのを目にしました。
「努力を継続できる人が天才」なんてよく言われますが
大竹さんはそれを体現している。そう感じました。

大竹さんの歌には、いわゆる「歌唱力」というものを超えた力がありました。
確かな音程で美しい声で歌うことは
歌にとってさほど重要なことではないのではないか?
そんなことまで思ってしまうほど、こころ揺さぶられる歌でした。
特にラスト3曲「愛はなんの役に立つの」「愛の賛歌」「水に流して」では
涙が止まらなくなることも。


「愛はなんの役に立つの」はテオとのデュエット。
ふたりのやりとりのようなこの歌。
ピアフはそれまで壮絶なまでに愛し続けてきたけれど
最後の最後に、愛しながら愛されながら
幸せに穏やかに最期を迎えることができたのだと感じられて
なんだかとっても温かい気持ちになれる歌でした。
この曲のときに客席上にカラフルな電飾がともるのも
二人の満たされた気持ちを彩るようでほっこりしました。

「愛の喜び悲しみ知ることがきっと生まれたあかし」
「そうよあたし、いつも信じる懲りずに信じる愛がすべて」


そのテオを演じる碓井くんが、観れば観るほど味が出るっていうのか
わたし、なんだかクセになってしまいました(笑)
最初は、棒だと思ってしまったんですけど汗
ピアフをたしなめたり呼びかけたりする「エディット」っていう声と口調が
なんとも慈愛に満ちていてとってもよいのです。
わがまま言いたい放題だったピアフがテオにはとっても素直。
信頼しきってすべてをゆだねてる。
そのふたりの関係性がとってもいじらしくて可愛らしい。


トワーヌの梅沢さん。
ピアフの最期の場面は毎回、涙なくしては観られませんでした。
トワーヌの心が張り裂けんばかりの悲しみとともに
優しさや温かさがあの空間に満ちていた。
梅沢さん、この作品の前に「ボクの四谷怪談」 で拝見しました。
その時は息子の同級生の母親(麻実れいさん)とお上品に張り合う(笑)奥サマ。
同一人物とは思えませんでしたよっ!!
ブリオッシュをかじっての無邪気な「あまーい」がお気に入りでした。


シャルル・アズナブールの小西くん。
藤岡くんと配役が逆かと思ってました。ビジュアル的に(しゅたたたダッシュ

そうそう、○宝さん、チケット完売だからって手抜きしすぎじゃありません?
配役などが最後まで掲載されない公式サイトって。。ぶ~

なんてことはいいとして、話を戻して小西君。
長身イケメンなのに、どことなくヘタレ感があるので(ほめてます)
ピアフに愛想尽かしをされ、足にすがりつくのも「あり」でした。
アルバイトではイ○ポの米兵が好き(←ヘンタイか)
そして唯一のソロナンバー「忘れじのおもかげ」。
甘~く歌われるこの曲を、大竹さんはそれはもう幸せそうにうっとりと聴いていて
大好きなシーンの一つですラブラブ
こんなに愛されていて幸せなひとときがあるのに
そこにとどまれなかったピアフを思うと、もうねほろり

でもって、小西くんの左まゆに目がくぎ付けになったのはナイショです(笑)


ディートリッヒとマドレーヌを演じた彩輝なおちゃんがこれまたよい。
ディートリッヒは華やかで自信と余裕に満ち、まさしく「ドイツのかあちゃん」。
「もっとセクシーにしようかしら」っていうピアフに
「わたしが死んでからにして」って応じるところがかっこいい。
千秋楽は、ピアフに対するいらだちのようなものが強く出ていて
ちょっと残念でしたが。
片やマドレーヌは楚々として控えめ。
演じ分けが自然でよかった。


ルイ・ルプレの辻萬長(Wikiによると「かずなが」と読むらしい)さん。
イヴ・モンタンで有名な「枯葉」をルプレが歌います。
藤岡くんの「枯葉」を聴きたかったのはやまやまですが
辻さんの「枯葉」も渋くて哀愁があり、ステキでした。
ピアフが水兵さんをナンパするカフェのバーテンの
喜び勇んでついて行こうとしてぎっくり腰になるとこも好きにひひ
場面転換の間もひそかによちよち歩いてるのがツボでした。

それにしても、「ルイ」っていうのはすごくありふれた名前なのね。
この作品、そんなに登場人物が多いわけじゃないのに3人も登場。


ピアノとアコーディオンが舞台上で演奏されます。
ピアノの譜面を覗き見しようと前方席でオペラグラスを上げてみたら
なんとタイトルが日本語で書かれていましたえ゛!
アコーディオンは銀河劇場の「エディット・ピアフ」でも演奏されていた桑山哲也さん。
パリの下町の空気を感じられる音色です。
登場されての「アコーディオン弾き」では毎回、超絶技巧に見入ってしまいましたよ。
すばらしい!!
千秋楽は思わず拍手をしそうになりました(できませんでしたがハートブレイク)。


エピソードの断片をつなげたような構成はものすごく駆け足で
なおかつ、説明的なことは大きく省略されているため
予備知識がなければ非常にわかりにくく感じました。
でも、わかる必要がないのかも。
むしろ「ピアフ」が浮き彫りになっていたようにも思います。


千秋楽、大竹さんの喉の調子は完全ではありませんでした。
それは確かに残念ではありましたが
目の前に立ち、歌っているのは紛れもないピアフでした。
傍若無人で天衣無縫で。
ありのままの自分をさらけ出し、渾身の力で歌い切り、そして生き抜いた。
そんなピアフが少しばかりうらやましくもありました。


藤岡くんについては次の記事で。


プログラムの表紙がそれだけでカタルシスがあって素敵。

Andante


Andante


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【CAST】
大竹しのぶ エディット・ピアフ
梅沢昌代 トワーヌ
彩輝なお マレーネ・ディートリッヒ/マドレーヌ
藤岡正明 イヴ・モンタン/ジョルジュ/付人/取巻き/アメリカ水兵1/介護士
小西遼生 シャルル・アズナブール/ジャン/レイモン/アメリカ陸軍士官/取巻き/引っ越しスタッフ
碓井将大 テオ・サラポ/リトル・ルイ/ウエイター/付人/取巻き/リシュアン/介添え
谷田歩 ブルーノ/外人部隊の兵士/市民/付人/アメリカ水兵2
横田栄司 マルセル・セルダン/エミール/警部/ドイツ兵1/取巻き/売人
畠中洋 ルイ・バリエ/ドイツ兵2/付人
辻萬長 ルイ・ルプレ/リングアナウンサー/バーテン/ムシュー・ヴァンベール
岡村さやか 看護婦/娼婦/取巻き

【Band Members】
桑山哲也 アコーディオン
大貫祐一郎 ピアノ
高橋辰巳 ベース
渡邉雅弦 チェロ

【STAFF】
作 パム・ジェムス
翻訳 常田景子
演出 栗山民也
音楽監督 甲斐正人
美術 松井るみ
照明 高見和義
衣装 前田文子
音響 山本浩一
ヘアメイク 佐藤裕子
ステージング 田井中智子
アクション 渥美博
歌唱指導 菅井英斗
舞台監督 荒智司
演出助手 鈴木ひがし