砂漠で溺れるわけにはいかない | azure bicycle

砂漠で溺れるわけにはいかない




ドン ウィンズロウ, Don Winslow, 東江 一紀
砂漠で溺れるわけにはいかない

 「ストリート・キッズ」 の感想はこちらです。

 「ウォータースライドをのぼれ」 の感想はこちらです。

 探偵ニール・ケアリーの物語もついに完結です。日本では第一作の 「ストリート・キッズ」 が刊行されてからはるばる13年! まあ、世の中にはもっと気長に他のシリーズの続きを待っている読者もいますから、無事完結しただけでも良しとしましょうか…。

 今作は後日談と云われているようにそれほどスケールの大きな話ではなく、このシリーズのテーマは何だったのかということを明確に打ち出してサッと終わっていったという感じでしたね。
 で、そのテーマといえば、ニールにとっての家族の在り方、特に父性の発見と獲得です。ニールの持っている減らず口や、強気な部分や弱気な部分、他人に対しての過剰なまでのナイーブな心情、それらはすべて父親の不在が起因していることなんですね。
 顔も知らない父親という存在、自分の中に確かに流れる父親の血、ニールがどのようにして決着をつけるのか、ここではあまり詳しくは書けませんけど、10年以上も父親代わりとして接してきたグレアムでさえ足りえない父親というものを無意識に渇望していくニールの姿そのものが、このシリーズの最大の読者を惹きつける魅力であるのでしょう。

 そして忘れていけないのが、恒例の訳者・東江一紀のあとがきです。前作から1年で刊行できたことで今までよりもちょっと強気のあとがきなのが可笑しい。。てか、なんでホープ・ホワイトの日記みたいな口調のあとがき?! と突っ込みたいところはぐっと抑えて、確かに翻訳ミステリはずっと話題作もない状態でしたから出したくても出せない状態だったようですね。フロストシリーズも相当凍り付いたままですしね…。
 なにはともあれ、このニール・ケアリーシリーズは東江一紀の翻訳あってのものですし、日本の読者はこのことに本当に感謝しなくてはいけませんよね。
 本当にありがとう、13年間も待たせてくれて!

 ニール・ケアリーシリーズを振り返ってみれば、それはちょっと甘くてちょっと苦い(←ママレード・ボーイじゃねーか!)
 ニールはカレンなんかとは別れてさ、私と一緒にいればいいんじゃないかな(きゃっ、赤面!)