膵臓癌の義弟と不思議な義妹

膵臓癌の義弟と不思議な義妹

1年ほど前に義弟が膵臓癌と発覚しました。
得体の知れない義弟の妻が謎すぎて吐き出したい。
男と女は不思議なもの。
惚れた女に男は弱い。
逆もそうか。

先日義弟の所へ行ってきた夫。


数日経って改めてそっと聞いてみた。

「今週は行かないの?」


「行かない。数日前に抗がん剤うったばかりだから今週は1番辛い時。もう1番強いのだし副作用もかなりあるはず。死期が近づいて来てる感じがするよ。やつは着々と準備してる」


「準備?身辺整理?」


「心の準備」


「そっか。お義母さんは行かないの?」


「母親連れて行くと弟が疲れる。母親さ、まだ現実を受け入れてないんだよ。あの人ね、昔からそうなの。弟もそれで少し参ってる」


「というと?」


「例えば、弟に電話をして『〇〇が身体にいいから食べなさい』とか」


それはキツい…

体調もキツくて苦しいながらも自分の最期と向き合っている最中なのに、見当違いの言葉にどっと疲れるのは私でも想像がつく。


「母親はね、依存体質なの。ばぁちゃんを毎日世話していて周りにはいい娘さんに映っていたみたいだけど、俺には依存しているように見えたよ」


「なる…」


「難しいことはすぐ諦めて自分で何とかしようとしない。『私は頭が悪いから』とすぐ逃げる」


「ふむふむ」


「例えばさ、親父がいなくなって軽トラのガソリンを自分で入れることになったんだけど、入れ方わからないから俺が教えるわけ」


「うん」


「できない、わからないからもういい、ガソリンスタンドで入れてもらう、と言うんだけどセルフじゃないと高いでしょ。だからやっぱりセルフがいいと言うわけ」


ふんふん


「だからまた俺が教えるんだけど、やっぱりわからない。アンタやって、になるの。だから俺が今入れてるんだけど、全てがそう」


「結婚する前は親に依存。結婚してからは親父に依存。親父がいなくなったら息子に頼る。できないことを頼るのはいいんだけど、自分で調べたりやろうしない。ちょっと難しいことからすぐ逃げる」


ふんふん


「黄兎ちゃんのお母さんは昔から1人で苦労してやってきたからすごく自立してるよね」


確かに。私が小4の頃に離婚したから女手1つで私を育ててくれたからなぁ。


「自分で何でもやらなきゃ、が強いよね。うちの幸せな主婦生活を続けてきた母親とは全然違うよ」


確かに。

私の母親の私への頼り方は「これやって」じゃなくて「やり方を教えて」だもんな。


そういえば夫の話を聞いていて思い出したのが、というかずっと心に引っかかっていた義母の言葉がある。


義父が亡くなって数日経った頃

「お父さん(義父)、もうちょっと頑張って欲しかったわ。本人は家族に迷惑をかけないようにと思っていたかもしれないけど、私は全然迷惑じゃないし、お父さんの世話したかったわ」


と言っていた。


お義父さんは終盤は痛みや辛さに耐えられない、もう疲れたと言っていた。家族に迷惑をかけたくないもあったろうけど、それが一番の原因なのではと思っている。頑張る気力も失われるくらい辛かったのではと私も夫も思っている。


辛くて辛くて、痛くて痛くて…という本人の状況を思いやるよりも「自分が世話したかった」が勝るのか??と感じていた。


この何とも言えない違和感がはっきりした。

義弟くんも参るのはわかるな。