夜空から街を見下ろす夢をみるときは・011
「ユキ、俺と一緒に暮らそう。そんな家でてしまえ!」ソンシとは社会人1年生のときに出会ってそこから毎日連絡したり、会ったりしてる。家庭環境があまりにも辛くてつらいことばっかりソンシに並べ立てていたらそう言ってくれた。「そうだ、家を出よう。」書置き一枚をテーブルに置いていれば誰か見るだろうな。でも弟だとショックだろうな。男の子だからそうはいっても優遇されているし私のような扱いもない。「私は母親の代理人だから、この家にいてはいけないんだ。」そうも思っていた。もう弟も中学生だし、自分のことができない訳じゃないし何とかできるよね。たまに弟のことが頭をよぎるけどあいつは私と違って元気もいいし友達も多い。今はまだ未成年だけど、来年は自分の意思で結婚できる。ソンシと一緒に明るい家庭を作りたい…!子供ができたら、自分のような苦労は追わせたくないしそれは彼も同じこと。勿論、ソンシも機能不全家族で育ち母親の新しい夫に保証人になってもらい自動車会社に就職をしていた。「俺の母ちゃん、女でいたいんだよ。」これがソンシの口癖。本当はもっと、母親らしくいてほしかったんだろうなと思う。スナックを経営していたソンシの母は、ちょっとした料理がおいしく野菜も細切れにして色とりどりのおかずがカウンターに並んだ。ただ、男にだらしのない人だった。「17歳で俺を産んでるからまだ36歳なんだぜ!」と笑顔で母親に私を紹介した。どんなに愛しても、あんまり一緒にいてもらえなくて長男として弟と妹の面倒をみていたソンシ。父親の商売が破綻し、借金取りが毎日来ていたという元の家も外側から見せてもらった。ソンシと、これから生きていくんだ。人生が明るく感じた一瞬だった。