前回の記事ではご心配をおかけしました。
温かいコメントやメッセージに、とても感激しました。
有難うございます。
↑の続きです。
朝倉かすみさんの「平場の月」を読みました。
(以下、ネタバレ含みます)
登場人物の二人と年齢が近く、癌を患っている女性、という私との共通点。
大腸がんの手術を控えた女性(須藤)に、男性(青砥)は頻繁に会いに行くのですが、その理由が温かい。
夜、ベッドに入り、ひとりであれこれ考える須藤を想像したら、たまらなかった。
だれかと会って話すと、気晴らし程度にはなるはずだ。
「あれこれ」の時間はなくならないだろうが、合間に「あいつ、あんなこと言ってた」というような思い出し笑いが挟まれたら、ちょっと、いい。
青砥は須藤を笑わせたかった。
ただ会いたいというのもあるが。
なんて温かいのでしょう。
「癌」「手術」だなんて言われたら、毎日頭を離れません。
終わったとしても「再発」「転移」という恐怖が、常に頭のどこかにあるのですから。
おひとり様で、話し相手がいなかったら、ずっとそのグルグルの中にいて、飲み込まれそうです。
”笑わせたかった”という青砥の想い、正解だと思うなぁ~。
思い出し笑いの瞬間、フッとそんな恐怖やグルグルから解放される。
青砥の温かい愛をジワっと感じます。
手術して入院している時も、須藤は
「いいって言うまで見舞いに来ないで」
と言う。それを守った青砥だが、後悔する。
「おれがいるのに」って青砥は頼ってほしいと思っているのです。
須藤はストーマ(人工肛門)生活になるのだが、青砥は、大腸がんについてや、ストーマについて一生懸命勉強してくれる。
こういうの、ものすごく嬉しいのよね。
一緒に闘ってくれてる、って感じられるから。心強いし。
隣に眠る須藤の手を握って、
「おれがいる」と言いたかった。「忘れるな」と、「忘れた振りもするな」と握った手に力を込めた。
その手を須藤が握り返した。
須藤の揺れる腹筋と、息遣いする胸の動きが伝わり、しあわせなきもちになった。
「おまえの面倒はおれがみるから」という科白が喉まで出た。
須藤は幸せだな、こんなに青砥に想われて。
こんな時「おれがいる。忘れるな」の言葉(気持ち)は、
何より感激するんじゃないかな。
気持ちは須藤に伝わっていただろう。十分に。
青砥は「おれは須藤と一生いくのか。
友人ルートも、別離ルートも消えていた。
ひらけたのは、離れがたいというルートで、ふたつの藁の束を絡み合わせて丈夫な縄にしたような、そんな手応えが青砥にあった。
たぶん愛情というやつだ」
と感じていた。
静かに、でも熱く、お互いが離れがたい、替えのきかない存在になっていた。
でも、須藤は青砥のプロポーズを受け入れない。
とても須藤らしい。
「青砥には充分助けてもらってるよ。青砥は甘やかしてくれる。
この歳で甘やかしてくれるひとに会えるなんて、もはやすでに僥倖だ」
と言う。
須藤の表現は私も好き。
”甘やかしてくれる”ね・・・。
分かる。
幼い子や、若い女性を甘やかす、のとはちょっと違うの。
女はいくつになっても甘やかされたいのかも。
好きな人に甘やかされたい、が正しいかな。
須藤は癌が転移していた。
そんな自分のために、青砥の時間を人生を費やさせるわけにはいかない、って思ったんだね。
「合わせる顔がない」と言って、最期まで青砥には会わないままに旅立った。
会いたかったろうなぁ。。。
転移のことなんて思いもよらなかった青砥も、
求婚はあの日じゃなくてもよかったのだ。もっと言えば結婚なんてしなくてもよかった。
須藤と生きていけたら、それでよかった。
須藤の死を知った青砥。
彼女の姿、声、しぐさ、二人で過ごした時間を思い出すけど、
どれも色あせ、腑抜けのようにぼやけていた。
須藤がいなくなっただけで、世界はこんなに変わるのだった。
二人の関係は静かに始まり、静かに終わってしまった。
遺された人はみんな感じること。
世界はいつもと同じに、何事もなかったかのようにあるけど、自分にとっては空気も色も一変してしまった、と。
いや、でも、須藤が天に旅立っても、二人の関係は終わらないんだ、きっと。
ずっと青砥と一緒だね。
私の親友が旅立って、今月で丸13年になります。
素敵な彼氏が、毎日一緒に過ごしてた。
最期は病院に寝泊まりしてた。
須藤も、私の親友も、人生の最期まで愛されていたこと、幸せだったと思う。
でも。それだけに、その幸せが続いてほしかったな。
できることなら、この先もずっと一緒に温かい穏やかな日々を、共に過ごしていきたかったに違いないから。
うまくいかないな…。
人は必ずいつかお別れがくるのだから、一緒にいられる時間を、今を、大切にしないといけませんね。
その時間は永遠じゃないから。
フォロワー様からのご依頼でお作りしたアレンジメント
春のお花がBOXから溢れています。
ブルーがお好きだった奥様のために、ブルーのお花を入れたくて、
今回は綺麗な”ニゲラ”をお入れしました。
心を込めて
スイートピーの優しい甘い香りが漂っていました