お疲れ様です。

 

興奮のあまり、いつも以上にとっ散らかった内容で失礼します。

 

歌舞伎座、十二月大歌舞伎を観てきました。

 

 

 天守物語

 

 

めちゃくちゃ良かった! 

中村七之助の富姫で観る『天守物語』。

 

坂東玉三郎の亀姫も、

久しぶりに玉三郎をみるのが、

『天守物語』なのに目に沁みるような赤姫って

新鮮。

 

お土産を、あげるあげないの富姫とのやりとり、

超絶可愛くて悶絶する。

ちょっとふくれながらの「あげません…」、

言われてみたい!

なんか楽しそうな玉三郎。

 

舌長姥と名工の桃六を、

勘九郎が二役で演じる嬉しさ。

 

首をキレイにしてと

声かけられるまで居眠りしてる舌長姥、

前傾姿勢の身体がぺったんこで

驚異的な柔らかさ。

 

白く長いまつ毛の効果で、

目を見開いたときの目ヂカラが活きて、

怖くて面白い。

姥の役は過去は樹木希林がやったりして、

愛嬌ある怖さが必要。

吉之丞も良かったけど、勘九郎は面白いと怖いの落差があって抜群。

 

奥女中・薄(ススキ)が上村吉弥。

この安定感は嬉しい。 

『海神別荘』など

玉三郎による泉鏡花作品には欠かせない人材。

この声がしないと物足りない。

 

この配役で、

獅童の朱の盤坊は予想通りそうとう厳しい。

侍女たちの愛らしく華やかな芝居のおかげで

どうにか…。

 

図書之助が中村虎之介(中村扇雀の息子)。

 

飛び抜けて姿がいいとかではないけど、

声がしっかりしていて、

物おじしない感じが富姫とバランス取れていた。

 

『天守物語』は、

ワタシが見始めた時代はすでに

玉三郎の当たり役すぎて、

独壇場というか、

登場人物の誰もが、

富姫のふところを借りているように

見えることもあった。

 

玉三郎の圧倒的な存在感と

プロデュース力の前に、

全てが呑み込まれてしまうとでもいうのか。

 

今回の配役は、

それが良い意味でフラットになり、

七之助の富姫だけでなく、

亀姫、舌長姥、図書之助、桃六の面白さが活きて、

それをみんなが楽しんでいるように見えた。

 

七之助の富姫は、

細い輪郭に高い頬骨、切長の眼。

この人の声は、

ともすると硬質で冷たく響くと思っていたけれど、

富姫は緩急があり、

難しいセリフもいきいきとしていた。

 

人間の愚かさを心底軽蔑したような前半の富姫に、後半は

図書之助と出会ってから狂おしく切ない愛情で真っ赤な血が巡り始める様が素晴らしい。

 

また数年後に観たい、と感じる。

 

いったい、どれほどの重圧だろう。

玉三郎の当たり役をするなんて、

歌舞伎座タワーを背負って立てと言われるのに近いぐらい、

重くて潰れそうなのではないか。

 

それでも、

こんなに可能性に満ちた富姫を見せられたら、

期待してしまう。

上演を重ねて、

どんなふうに変わっていくのか楽しみだ。