昨夜のことは、夢か?現実か?

元の生活に戻ったシンデレラは、とても惨めだった。
昨夜の出来事が素敵すぎたから…。

年が明けても心は晴れなかった。

別居をして、夫の顔を見ずに生活できる快適さや気楽さの代償は、大きく苦しかった。

子どもたちのため、自分の見栄のため、
別居をしても生活を変えないように、3人子どものお稽古事もやめずに続けさせ、安物の外車で送り迎えし、平日のママ友とのランチも今まで通りに付き合った。

支出は変わらなかったが、収入は減った。

なぜなら、夫の会社の経営者である親は、私たちを戒めるために、夫は減給。
その上に、夫の一人暮らしの生活費は、私たち4人の生活費を大きく上回るらしく、減った給料の半分しかもらえなかった。
夫の親は私に辛く当たり、金銭面でも、苦しめば元の鞘に収まると思っていたのだろう。
本当に苦しかった。

実家の両親も年老いてきたためか、これまでのように、「面倒を見てやるから、帰ってこい。」とは、もう言ってくれなかった。

アルバイトの収入など、右から左に流れていくだけだった。

これでは生きていけない。
もう一つ、アルバイトを掛け持つことにした。
やはり平日のパート。
幼稚園の送り迎えの時間を最大に広げる工夫をし、その間、働いた。
保育の仕事だった。


彼とクリスマスディナー。

ホテルでフレンチ。

まわりを気にしながらも、


母でも妻でもなく、女としての時間を過ごした。

とても幸せだった。



夜は、やっぱりいい。


いつものランチデートより、ゆっくり話ができた。

そして、ふたりの間には、


お互いの知らない長い時間が流れていることを


あらためて感じた。



食事の後、

「次、どこ行く?」


と彼が言った。

「え?」

(決まってるでしょ?と思いながら)

「どこでもいい?」

「うん。」



何をじらしているんだろう?

どこに行くのだろう?

昔から彼は、私の想像を超えるようなことをしてくれる。


車に乗って、そうして着いたところは、


ビル?いや、彼のマンションだった。

彼も、もう長く奥さんと円満(?)別居をしていたそうで、


そこは彼の一人暮らしの部屋だった。



サプライズすぎる。


オーナーの彼の部屋は最上階。


緊張や嬉しさ、少しの不安でドキドキしながら中に入った。


入るとすぐ、広いリビングがあった。

そして、目に飛び込んできたのは、


かわいいオーナメントが、たくさん付けられた


大きなクリスマスツリーだった。

彼がスイッチを入れると、そのオーナメントたちが演奏を始めた。

サプライズすぎる!



「わぁ~、かわいい~。」

大きなクリスマスツリーのまわりをぐるぐるまわりながら、


私は子どものように「キャッ!キャッ!」言った。


嬉しかった。

離婚のことなど重苦しいことを、


ひとときだけでも忘れることができた。



彼のベッドで抱かれ、


私はますます夢の世界へと引き込まれていった。



「瑠璃子大丈夫?」

彼は別居したばかりの私を気遣ってくれた。

「うん。」


日付が変わる頃、


彼は高速をとばし、私を家の近くまで送り届けてくれた。



「ありがとう。」

「じゃぁね。」

やさしくキスをしてくれた彼は、


現実の世界に、


魔法が解けた私をひとり置いて、


夢の世界に帰って行った。










いきなり離婚ではなく、別居にしたのは、

長年、お気楽な専業主婦の座にあぐらをかいていた私の

生活力を養う母子家庭のシュミレーションのためでもあった。

そして、アルバイトを始めた。
三女がまだ幼稚園児だったので、

平日の短時間パートではなく、

土日の長時間のアルバイトがうまく決まった。


アルバイト先は、電気メーカーで、

ショールームや展示会で、

電気製品の商品説明やデモンストレーションを行う仕事だった。

別居のことを、

子どもたちには、はっきりと伝えなかったので、

週末の日中、夫が家に帰ることになっていた。

だから、安心して仕事に出かけられた。


新しい一歩を踏み出したかのようで、

久しぶりに働くことも新鮮、かつ楽しく思えた。

スピード結婚をして、支が一回りした12年目は、

初めての不倫、

彼との再会、

夫との別居、

脱専業主婦…と、

私の人生を変えるような激動の1年となった。


そんな年も暮れに近づいた頃、

彼が、クリスマスディナーに誘ってくれた。



夫とは、もう限界まできている。
3人の子どものことを考えると、

離婚に踏み出せない。

しかし、私の人生は全て子どものためではない。
様々な葛藤の中、

夫と傷つけ合う話し合いを繰り返し、

別居することになった。


彼は、

「僕のせい?」

と聞いた。
「うぅうん、関係ないよ。」
そうは言ったが、

彼が心の支えであったのは確かで、

全く無関係では、なかったのかもしれない。


実家を頼る気もなく、女ひとり・・・。

何もなければ踏み出せなかっただろう。

彼という存在があるだけで、淋しくはない。

強気になれたのは、やはり、彼のおかげだと思う。


彼との再会後、

彼のやさしさに触れてしまった私は、

彼と一緒にいる安堵感が蘇り、

すぐ、真也の存在は薄れていった。



彼との昼間の情事が始まった。
彼は、仕事の都合をつけて、

ランチに連れて行ってくれた。


そして、ホテルに行く。


やはり彼はやさしい。

彼に抱かれるととても安らぐ。

とても幸せな気持ちになる。

「愛してる」とは言ってくれなくても

「瑠璃子」といって、頭を撫でてくれる

このときの目が

「愛してる」と言ってくれているのがわかるから。


そんなデートを月に一度、重ねていた。



彼という存在が、私の中で大きくなってきたことは事実だが、

それとは別に、前々から拗れていた夫との仲が、

悪化していった。


音を立てるようにとは、よく言うが、

ガタガタという、その音が私には聞こえた。