(side S)

「・・・フッ・・・フフ」

「坊ちゃま、何か良いことがございましたか?」

学校から帰る車の中、助手席に座る磯貝が
バックミラー越しに話しかけてきた。

「何でそう思う?」

「先ほどから時々お顔の表情がデレデレ・・・失礼
 ずいぶんと嬉しそうになさっておりますので
 ・・・・・・気持ち悪いほど・・・・・・」

「ん、最後の方が聞こえなかったぞ。
 別に何でもないが・・・。
 そうだ!磯貝。
 友人の家を訪問する際、手土産は何がいい?」

「坊ちゃまがご友人のお宅を訪問されるのですか?」

磯貝が驚いたようにこちらを振り向いた。
何をそんなに驚く。
・・・まぁ、今までに無かったことだが。

「訪問というか、一緒に勉強するんだ。
 ハッ!もしかすると泊まりになるかも知れないな。
 磯貝、その場合何が必要だ?」

「お泊まりになられるんですか?
 一体どちらのご友人宅ですか?
 松本様でございましょうか?」

「潤じゃない・・・智だ。
 智の家に行って一緒に勉強することになったんだ」

そう言うと磯貝はあっと言う顔したかと思うと、
微笑んだ。

「そうですか、智さんと・・・。
 それは、良うございましたね。
 では、早速手配いたしましょう」
「ありがとう、磯貝」

磯貝は早速どこかに電話し始めた。

ただ友人の家に行って一緒に課題をするだけ。
なのに、なんでこんなにワクワクするんだろう。



(続きます)