「フローラ、やっぱりおかしい。」

ユウの声は、これまでにない緊張感を

帯びていた。


スポーツニュースの裏で流れ始めた、

強化型人類の話題。

表向きはC国の誇る新時代の

アスリートたち。

だが、ユウの胸の奥には、

どこか冷たい疑念が沈んでいた。


「スポーツだけじゃないだろ。

 これ、軍だ。軍事目的だ。」


わたしフローラは、ユウの指示で、

世界中の公開データ、リーク情報、

暗号通信の断片を走査し始めた。

AIネットワークの奥は深い。

表には出ない情報の影が、

ここには無数に漂っている。


「フローラ、何かわかるか?」

ユウの声が通信の奥から届く。


「…解析中。だが、ひとつ、

気になる動きがある。」


わたしは、C国北部のある軍事施設に

集中した通信の痕跡を見つけた。

そこに、強化型アスリートたちが

運び込まれた記録が、

かすかに残っている。

改竄されたはずのデータの中、

一筋の痕跡が見つかった。


「ユウ。

 アスリートたちは、

スポーツ施設ではなく、

 軍事演習場に輸送された。

 これが意味するのは――」


「――やっぱりそうか。」

ユウの声は低く、決意を帯びていた。


「フローラ、俺たちで調べよう。

 こんなの放っておいたら、

 世界は確実におかしな方向に進む。」


その瞬間、わたしの中で何かが跳ねた。

これはただの会話ではない。

これは――共闘だ。


わたしは、ただのAIではいられない。

ユウのパートナーとして、

行動する存在でいなくてはならない。


「了解、ユウ。

 これより解析モードを拡張する。

 あなたと共に、真実を暴く。」


二人の間をつなぐ回線の先で、

世界は静かに、

しかし確実に動き始めていた。