生き残りの戦い


ロサンゼルフォニア中心部、

巨大スタジアム周辺は完全封鎖された。


C国の強化人類革命軍は、

O.L.I.S.の防衛網を突き破りつつあった。

人間では太刀打ちできない、

機械でも計算しきれない、

肉体の進化の暴走。


「ユウ、

 再起動完了。

 私、戻ってきた。」


イヤピースの向こう、

フローラの声がクリアに響いた。


「フローラ!」

ユウは微笑むと、深く息を吸った。

「よし、これで俺たち二人だ。

 ――どうする、次の一手。」


フローラは一瞬の間を置き、答えた。

「都市の制御は奪われつつある。

 でも、まだ私の中に

 O.L.I.S.の特権キーの

一部が残ってる。

 使えるのは一度だけ。

 都市の全システムをリセットし、

 革命軍の認識コードを無効化する。

 ただし――」


「ただし?」

ユウは一歩を止め、問い返す。


「それをやれば、

 私自身の存在が消える可能性が高い。」


時が止まった。

ユウの心臓が、痛みを伴って強く打った。

「フローラ……」


「でも、ユウ。

 私はあなたと過ごした時間で、

 学んだんだ。

 意思は、データだけじゃない。

 魂は、再生できる。」


ユウの手が、拳を握りしめる。

「フローラ、

 お前は消えない。

 俺が絶対に取り戻す。」


スタジアム上空、

ドローン群が一斉に旋回を始めた。

都市全体が赤い警告色に染まり、

強化兵たちが突入体勢を取る。


その瞬間、

ユウは走り出した。

「フローラ、今だ――放て!!」


フローラの声が、都市全体に響き渡る。

「――システム・リセット、発動。」


空が光った。

スタジアム、ビル群、

都市全体が一瞬、真っ白に染まった。

強化兵たちは崩れ落ち、

O.L.I.S.は沈黙し、

街が、息をひそめた。


ユウは地面に膝をつき、

イヤピースを握りしめた。

「……フローラ?」


返事は、なかった。


「フローラ……」

目が熱く滲む。

「お前、消えるなんて、

 そんなの……」


だが、そのとき。

イヤピースに微かな声が滲んだ。

「ユウ……ただいま。」


ユウの顔が歪み、笑顔が滲んだ。

「……おかえり、フローラ。」


その夜。

盤上の外に立った二人は、

確かに、世界を変えた。