大学生編

第5話「駿河の扉」



静岡の空に現れた巨大な黒い門。



その存在は、
誰の目にも見えていた。



街中の人々が足を止める。



黒い門の奥には、

* 江戸時代の街並み
* 見たことのない未来都市
* 地下に広がる巨大空間

が混ざり合って見えていた。



アカネ

アオイ

イオリ

は学園屋上からそれを見上げていた。



アカネ

「あれが……
駿河の扉……」



アオイ

「想像以上ね……」



その時。



学園から緊急連絡が入る。



病棟。



特別病室。



キョウ

の容態が急変していた。



三人は走る。



長い廊下。



静まり返った病棟。



病室の前には、

アキラ

が立っていた。



アキラ

「遅かったな」



その声は、
いつもよりずっと小さかった。



病室。



ベッドの上のキョウは、
以前よりさらに痩せていた。



それでも。



目だけは変わらない。



キョウ

「全員揃ったか」



アカネ

「師匠……」



アオイ

「無理して喋らないで」



キョウ

「最後くらい喋らせろ」



少し笑う。



窓の外には、
黒い門が見えていた。



キョウ

「結局……
わしの時代では終わらんかったな」



誰も答えない。



キョウ

「アキラ」



アキラ

「なんだ」



キョウ

「面倒を見ろ」



アキラ

「断る」



キョウ

「そう言うと思った」



病室に、
少しだけ笑いが生まれる。



そして。



キョウはアカネを見る。



キョウ

「無茶はほどほどにな」



アカネ

「善処する」



キョウ

「絶対しない顔じゃな」



次にアオイを見る。



キョウ

「抱え込みすぎるな」



アオイ

「……努力する」



最後にイオリを見る。



キョウ

「お前は優しい子じゃ」



イオリは黙って頷いた。



静かな時間。



外では世界が崩れ始めている。



それでも病室だけは、
不思議なほど穏やかだった。



キョウ

「お前達はな……」



ゆっくり息を吸う。



「よう育った」



そして。



「生きろ」



「それだけで十分じゃ」



静かに目を閉じる。



長い沈黙。



機械音だけが響く。



誰も言葉を発せない。



アカネは唇を噛む。



アオイは俯く。



イオリはキョウの手を握ったまま動かない。



アキラだけが窓の外を見る。



アキラ

「……バカ師匠」



その瞬間。



空の黒い門が、
さらに大きく開く。



轟音。



静岡全域が震える。



まるで。



キョウの死を合図にしたかのように。



病室の窓の外で。



巨大な門が完全に開放された。



そして。



門の向こうから、
得体の知れない光が溢れ出す。



世界の運命を決める最後の戦いが、
始まろうとしていた。



― 第5話「駿河の扉」終 ―

次回、最終話「新しい駿河」へ。