僕は技を手に入れた。それは、1日中家にいるからこそ身についた技なのかもしれない。僕の技…。それは、目をつぶったままおしっこができること。人は、馬鹿にするかもしれない。鼻で笑うかもしれない。だが、僕は便器への角度、便器の大きさ、息子から標的までの距離。すべて正確に極めた。
それが何の役に立つか?と人は聞くだろう。考えてほしい。何か考え事をしていてふと息子から目をそらしてしまっても大丈夫なのだ。素晴らしい。その技のすごさには宇宙すらも感じる。
俺はこの技を実戦でも通用するか試そうと決めた。慣れ親しんだ我が家の便器に別れを告げ、僕は家を出た。4月というのに風は冷たい。コンビニの個室トイレは広い。まさに戦いの舞台としては相応しい。僕は一回深呼吸をする。そして、目を閉じた。チャックを下ろす。社会の窓から息子を出すのに手こずった。スウェットからジーパンにはき変えた自分を悔やんだ。一歩前へ出る。ここは順調。そして、自分の息子を持ち、角度を合わせる。ここでも目を閉じたままだ。勘だけが頼りだ。そして、発射。「たたたたた」嫌な音が鳴る。まさか!?と思い目を開ける。トイレの床には、黄色い水溜まり。いや、尿溜まりだ。
僕は、そそくさとそ の店を出た。