あなたが誰かがどうか気づいて
笑い飛ばすくらいでいて
わたしが必死で欲しがって、わたしが必死で手に入れることを避けるものがあることを
そしてできたらわたしをその世界に強引に連れていって
私は「得」と書いて
彼は「愛」と書いた
だから私は何かを得たけれど
大事なものを知らない
彼は私の人生の中でわたしが言う強引さを持った人だったけど
私の方が強かった
ふふ 都合のいい物語 悲しい喜劇












小さい頃に石ころで潰し殺した青虫が忘れられない
小さい頃にママとパパが喧嘩してた夫婦が忘れられない
小さい頃に湖の周りを歩いた怖い日が忘れられない
小さい頃にベランダから落ちて死ぬ妄想をしたのを忘れない
小さい頃にベランダから落ちて死ぬ妄想をしていることをママに気づいてほしくて窓を凝視したのを忘れない
小さい頃に死んだ振りをして嵐がすぎるのをまとうとしたことを忘れない
小さい頃にパパが睨んだのを忘れない
小さい頃にママに言わされたのを忘れない
だからパパは睨んだ
小さい頃に飲み込んだ言葉たちを忘れない
そうして私は年々記憶を積み重ねて
きれいに忘れたいことは消えて逝って
そうしてこんな人間になった
いつか今は正当化できることが私を追いかけるだろうか
私はそれに怯えるだろうか
私はそれに殺されたりするのだろうか
私はそれになんて言って命乞いをするだろうか
私はそれをまた忘れるだろうか
私はそれに私は小さい頃に私は






誰か全部を包んで止めてくれないか
それか誰かわたしの一番叶えたい夢を潰してくれないか












何かが蠢くかのように
私は語り始めよう
少しの幸福なんかより
官能的なものでありたい
止処ない展開が
偏光することを望む
開かれた表紙の奥は
簡単にエデンを追い越す
何が待っているのだろう
何が始まるのだろう
燃える皮膚が騒めいている
ヘイ ストーリーテラー
退屈にさせないで
劇的で 美しくて
そんな明日へ導いて
ヘイ ストーリーテラー
過激に楽しみたいの
颯爽と連れられて
不可思議な期待で次の扉が開く
偶然や運命が渦巻く
私は歩き始めよう
今はまだ小さい裂け目でも
気付けば全部を呑み込む
健全で傷みもない
そんなふうにはなれなくて
開かれたページの奥は
純白のままここに在る
進むべき方向へと
選ぶべき物事へと
見えない力が運んでゆく
ヘイ ストーリーテラー
迷わせたりしないで
神聖で 潔ぎよくて
そんな未来へ導いて
ヘイ ストーリーテラー
予想を裏切りたいの
颯爽と連れられて
不可思議な期待で次の扉が開く
どんな物語が繰り広げられるのかを
快感に変えて行ける
受け入れるその先は誰も知らない
続きが無くて震えてしまう
ヘイ ストーリーテラー
退屈にさせないで
劇的で 美しくて
そんな明日へ導いて
ヘイ ストーリーテラー
過激に楽しみたいの
颯爽と連れられて
不可思議な期待で次の扉が開く


鬼束ちひろ