気が向いたので、読書感想文ブログを作りました
どんな本を読んだかを覚えておくことと、文章力向上が目的です
思ったままにあらすじや感想を綴ります
No.1 重松清「十字架」 講談社文庫
主人公のユウがタイトル通り「十字架」を背負い、
苦悩し後悔につぶされそうになりながら成長していく物語である。
この「十字架」とはユウの同級生で幼馴染であるフジシュンの命だ。
フジシュンはクラスメイトからのいじめを苦に中学2年生で自らの命を絶った。
その時彼の書いた遺書が、ユウの人生に深く影響を与えることとなる。
ユウは中学生になってからはフジシュンとろくに会話もしないほどの間柄になっていた。
しかし、彼の遺書には「親友」として裕の名前が記されていた。
自分のことを親友と思っていたことにユウは戸惑い、罪の意識や憤りを感じる。
遺書でユウの名前を挙げた彼の気持ちは永遠に彼にしか分からない。
フジシュンの家族、ユウと同じ十字架を背負うサユ、自殺事件の記者、
フジシュンの死後に彼らと関わりながら、様々な感情を抱きながら裕は生きていく。
フジシュンとの日々を思い返し、徐々に記憶が薄れ、また思い出を辿り生きていく。
「いじめ」や「自殺」、「死」がテーマのこの小説は、深刻で重い内容でした。
いじめられる辛さというより、残された人々の悲哀ややりきれなさ、
どうすればいいのか分からない気持ちが伝わってくる作品でした。
高校・大学・就職と年月を重ね人一人の死すら色あせていく時間の経過に
仕方無いと感じて良いはずがないのに感じてしまう複雑なユウの心が伝わりました。