Do they hear you when you cry?
今から約一年半前、私はカナダに来たばかりで全てが新鮮で、
何もかもが楽しくてしかたなかった。
そんな私を訪ねて日本から友達が遊びに来た。
カナダで初めての夏のこと。
彼女は二冊の本を日本からお土産に持ってきた。
上下巻の「ファウジーヤの叫び」という本。
これを読んで私はショックを受けた。
それまでFGMなるものを知らなかったから。
1977年、西アフリカのトーゴという小さな国に生まれた
敬虔なイスラム教徒のファウジーヤは
とても斬新な考え方を持つ父親を始めとした愛情溢れる家族に囲まれ、
裕福で何不自由ない暮らしをしていたのだが、
父親の突然の死をきっかけに彼女の人生は一変した。
父親の姉妹が母親を追い出し、若いファウジーヤを年が倍以上も離れた男の
四番目の妻として結婚させようとしたのだ。
結婚前にはカキアと呼ばれる儀式を行わなければならない。
カキアというのは彼女の部族の言葉で、世界ではFGM(Female Genital Mutilation)と呼ばれている。
私はこの本を読むまでFGMなんていう言葉の存在すら知らなかった。
大学時代にイスラム関係の本を随分読んだが、聞いたこともなかった。
しかし、実際アフリカのイスラム諸国に多いそうだ。
FGMというのは約2000年近く続く女性性器切除の儀式である。
今現在でもアフリカ大陸を中心に行われている。
施術にはガラスの破片や、空き缶のフタ、鋭利な石などが使われる。
多くは麻酔も使われず、伝統的な儀式として地元のヒーラーや助産婦が行う。
出血多量やショックなどで命を落とすことも少なくないそうだ。
不衛生の為、破傷風などにかかり、命を落とすことも多いという。
私たちの常識では全く理解のできないことである。
世界はこの悪しき風習をなくそうという動きが続いているものの、
実際その世界で生きている女性たちにとっては当たり前のことなのである。
私たちが毎日歯を磨き、顔を洗うように・・・。
施術の時期や方法は部族、地域によって様々である。
生まれたばかりの女児に施す場合や、
ある程度成長し、初潮を迎えたころの女児を地域で一斉に集め、
一人一人順番に行うこともあるそうだ。
順番を待っている女児のほとんどはそれを恐れていない。
むしろ、結婚をするのに必要不可欠という意識がある為、憧れてさえいる。
母親は娘が幸せな結婚ができるように早く受けさせたがる。
そもそもどうしてこんな習慣が生まれたのだろう。
いろいろな説があるが、どうやら女性を縛り付けておくためのものらしい。
女性が性行為で快楽を感じるなんてのはもってのほかで、
女性は子供を産むための道具なのである。
そんなむちゃな手術の後遺症はそれはつらいらしい。
性行為や出産のたびに切り開き、もしくは裂け、
衛生が保たれず、不妊になることもしばしば。
そのトラウマが一生続くことも。
進んだ考え方を持った父親の影響でファウジーヤはしっかり教育を受けたため、
私たちと同じようにカキアなんて考えられないと思ったのだろう。
なんとか国外に逃げ、アメリカにたどり着く。
そこでも苦しい思い、絶望を味わいながらも弁護士の卵、
レイリ・ミラー・バッシャーと共に戦い、現在はNYに暮らす。
アフリカ最大の国土を持つスーダンでのFGM実施率は89%、
ソマリアではなんと98%の女性がFGMを施されている。
これを行わないと、結婚の結納金がもらえないばかりか、
結婚相手さえ見つからず、しまいには村八分にされることもよくあるそうだ。
アメリカの移民の中にも密かにアメリカ国内で実施するものもいるらしい。
- Fauziya Kassindja, Layli Miller Bashir, Gini Kopecky, Fauziya Kasinga
- Do They Hear You When You Cry
カナダはジェンダーにおけるガイドラインを最も早く制定した国であると聞く。
ここ、トロントは多民族国家である。
世界中の人々がそれぞれの文化を守りながら平和に暮らしている世界でも数少ない場所。
この本を読んだ当時、私は多くのエチオピア人と働いていた。
もしかしたらこの人も・・・なんてよく考えたものだ。
オプラ・ウィンフリーという人のトークショーではよく差別問題などが取り上げられる。
日本人が知る由もないこの事実を多くの北米人は知っているようだ。
私の周りのカナダ人も知識の一つとしてではあるが、知らない者は少ない。
私たちは私たちの常識を押し付けようとして、
彼女たちの常識を否定しようとしているのだろうか?
非常に難しい問題ではあるが、日本人にもこの事実をもっと知ってもらいたいと思う。
ぜひ、読んでもらいたい一冊である。
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