「ウチに来いよ。手伝ってくれ」
先輩から電話がきた。
勤め先が民営化されるってなった時、
辞めてった人は多かった。
一番の理由は、給料が「だだ下がり」だったから。
しかも、「公務員」って肩書もなくなる・・・・・まぁ、正式には「準公務員」だけど。
それでも、労務規定は市役所と同じだった。
給与。
休暇。
退職金規定・・・・
だから、恵まれた勤め先だったんだよな。
それが、民営化で、
全てを失った。
能力のある人ほど辞めてった。
そんな先輩から声がかかったんだった。
先輩が転職したのは、
営業譲渡された・・・・つまりは、ボクが勤めているのと同じような民間会社。
ただ、
ちょっと違ったのは、
「ベンチャー系」だってことだった。
新規事業者だったってことだ。
面白いのは、
「子供施設」だけを手掛けているわけじゃないってこと。
介護、福祉・・・・人間の携わる、全ての領域に進出していった新規事業者ってことだ。
あとは、「医療」の分野まで手を伸ばしている。
例えば、
「子供施設」ってだけでも、
一般の、幼稚園、保育・・・・学童・・・・だけにとどまらず、
流行ってきていた、
「企業内保育」みたいなことも手掛けていた。
財政からの「補助金」に頼らない、経営体質をつくりあげているんだった。
んで、
業務は拡大の一途。
圧倒的な「人出不足」って、
羨ましい状況になっていた。
それで、
人員をかき集めていたんだよな。
世間は、
「失われた30年」って時代だ。
就職。
転職すら、うまくはできない。そんな時代だった。
「The・勝ち組」って企業群だった。
「また、一緒に働かないか?・・・・気心も知れてるからオレとしては楽なんで・・・来て欲しいんだよな・・・・」
小中高。
あとは、働き出してからも、
人から、
「頼られる」
「求められる」
そんな経験は初めてだった。
嬉しかった。
単純に、嬉しかった。
・・・・それに、
「茹で蛙」の人生だった。
真綿で首をジワジワ締め付けられる人生だった。
この後、
ボクの人生は、どうなるんだろう・・・・
何とかしなきゃ・・・・
そう思いながら、何もできないもどかしさを感じていた。
時代は、
「平成大不況」の最中だ。
簡単に、
「転職」できるって時代じゃなった。
「始めの一歩」が踏み出せないもどかしさがあった。
・・・・あとは・・・
麗華さんとのこともある・・・・
麗華さんは、
ボクを、
「ベビーシッター」
「アルバイト」としかみていなかった。
・・・・こんな、
全てに、行き詰った人生。
変えてしまわないと・・・・
テレビでは、
オバマが、
「チェンジ!!チェンジ!!」と騒いでいた。
・・・・・それに、
何よりの理由。
提示された給料は、
今の、1.5倍だったんだ。・・・・・夢見てるようだった。
「行きます!!
一緒に働かせてください!!」
す・・・すげーーーー!!
やったーーーーー!!!
ボクの人生。
チャンスがやってきた!!
ボクは、先輩の会社に転職したんだった。