そこで、初めて、ちゃんと麗華さんと話した。
「とっつきにくい」
ぜんぜん、そんなことのない人だった。
「人見知り」
ってだけだった。
離婚して、
実家近くに引っ越してきた。
歳はボクよりも2こ上。
音楽大学を出たけど、すぐに結婚して専業主婦に・・・・デキ婚ってことらしい。
図書館のロビー。
隅っこでふたりで話していた。
麗華さんは、
これまで見てきたのと、全く違う顔つきだった。
離婚して・・・・シングルマザーになって・・・・知らない土地へきて・・・
毎日、緊張しながら生活を送ってたんだな。
誰にも弱音は吐けない。
それが、
いつも見る、
「とっつきにくい麗華さん」の正体だったんだ。
「お兄ちゃーん」
遊んで、遊んでとガクくんにせがまれた。
麗華さんは、
仕事の資料と、ガクくんの絵本を見に来たんだった。
図書館には、ちょっとした子供の遊び場所みたいなところもあって、
麗華さんが資料を探してる間、
ボクは、そこでガクくんの面倒をみていた。
・・・・ちなみに、「ガクくん」
名前の「額」は、
「画家」だった、旦那さんがつけた名前なんだそうだ。
・・・・なるほどなぁ・・・・「額縁」からだったんだな。
クリエイター夫婦だったってことなんだな。
ちなみに、
麗華さんは、
今は、
「モデル」の仕事をしてるらしい。
・・・・そっかぁ・・・・そりゃ、「美しい」はずだよ・・・・
高校生から「読者モデル」をやっていて、
そのツテで、今は「ママモデル」で、雑誌や広告なんかのモデルをやってるらしい。
「ぜんぜん稼げないけどね・・・・」
それでも、依頼はあるし・・・・
「他に何もできないのよね・・・・」
大学出てすぐに結婚。
これまで、「働く」って経験がない。・・・・しかも、卒業したのは「音楽大学」
「就職」するってなると、
なかなか仕事ってないらしい・・・
その日は、
そのまま、晩御飯も一緒に食べた。
「お礼」ってことで、ご飯を奢ってもらった。
「ファミレスでごめんね・・・・」
いや・・・・ボクにとっては、十分にごちそうだった。
ガクくんは、すっかりボクに懐いていた。
ボクにとっては、とても素敵な休日だった。
それからも、毎日、麗華さんはベンツで、ガクくんを迎えに来た。
どこか、とっつきにくいサングラス姿は変わらなかった。
ボクは、
なんだか、素顔の麗華さんを知ったようで、
ちょっと優越感を感じたような気がしていた。
・・・・・そこから2週間も経っていない。
夜に携帯が鳴った。
麗華さんだった。
「夜にゴメンね・・・・助けてほしいの・・・・」