隼人とツグミ 告白後で恋人未満!
(二人は同じ会社のアパートに住んでて、キッチン共有なので朝から一緒にいますが同棲してません)
***
「ツグミ。朝ごはん、食べさせてもらってもいい?」
いつも通り出勤前に朝食の支度をしていたところに、隼人が笑顔でキッチンを覗き込んだ。
彼の笑顔は快活で、見る人を安心させる。それに、とても華のある人だから、その笑顔だけでキッチンが明るくなったように感じた。
「もちろん」
私は微笑んでそう答えた。
配膳を手伝ってくれた隼人と向き合って、いただきますと手を合わせる。
「うん!やっぱりうまい」
隼人が味噌汁を一口飲んで嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
「よかった」
それに応じて微笑んだ私を見て、隼人はまたひとつ穏やかな笑みをよこした。
「最高!早起きした甲斐があった」
「………そういえば、今日は隼人は非番だったわね。何か用事があるの?」
いつもなら非番の日の隼人の朝は、もう少し遅いことが多いのを思い出して、私は首をかしげた。
「うん。いや、今日は特に用もないから、ツグミの作った朝ごはんを一緒に食べられたら幸せかなって思って早起きした」
「そ…そうだったの」
返事をしながら、いつもどおり真っ直ぐな物言いに少し恥ずかしくなってしまう。
最初から彼の嘘のない言葉は、ときどき私の痛いところをつくこともあるけれど、私を照れさせることも多かった。
だけど、あの告白の後は隠す必要もないと、隼人の言葉はよりストレートになって、私をドキドキさせる。
どうしていいのか正直困っているのに、なのに、決して嫌な気持ちにならないのは彼の明るさと芯のある真っ直ぐさのせいだ。
あの告白を思い出してしまって、自然な会話ができそうになくなってしまった私はご飯を口に運んでごまかすことにした。
「あーれぇ?お二人そろって朝食中?」
そんなときダイニングに、のんびりとした声がかかった。
山吹色の着物の袖を弄びながらダイニングに入ってくる紫鶴さんの顔は、からかいの色を含んでいる。
「仲睦まじいね。やーけーるなーぁ」
こんなからかいも、ずいぶん慣れたもののはずだけど、さっき考えていたことのせいもあって、私は挙動不審になってしまった。
「っ………紫鶴さん、何を言ってるんですか。紫鶴さんも食べますか?まだありますよ」
「うん〜。ありがとー。だけど、今日は遠慮しておくよ。ちょっと飲みすぎちゃって眠いんだ」
「紫鶴さん、朝帰り?」
隼人の問いに紫鶴さんはにんまり笑む。
「そうそう。ちょっと杙梛と飲んでたんだけど、ついさぁ…あ。そうだお嬢さん。杙梛から伝言。この間品切れしてた石鹸が入荷したから、また寄ってくれってさ」
「わぁ。嬉しいです。このあいだお店で頼んでおいたんです。紫鶴さんありがとうございます。助かりました」
「うん。じゃあ、僕は寝るね。おーやすみぃ」
ダイニングを出て行った紫鶴さんを見送った後、食べかけの朝食に向き合う。と、隼人がじっと私を凝視めているのに気がついた。
「今日の巡回ルートって、どこだった?」
「シンジュクです」
突然の問いに、不思議に思いつつ答える。
「じゃあ、杙梛さんの店はルートに含まれない。よな」
「そうですね」
「今日行くの?」
「杙梛さんのお店ですか?そうですね、ちょうど昨晩、石鹸が切れてしまったので、今日からいつもの石鹸じゃない物で我慢しようかなと思ってたくらいなので。仕事終わりにお店に寄ろうかな」
「そっか………」
そこで隼人がふっと表情を曇らせた。
「?」
「なぁ。それ、俺も行っていい?」
「え?隼人も何か杙梛さんのお店に用事があるの?でも、私が行けるのは仕事終わった後だから時間がだいたいしかわからないよ?一人で行ったほうがいいんじゃない?」
待たせるのも悪いし。と思いそう言うと、隼人は少し迷ってから、形の良い眉を寄せてはぁっとため息を落とした。
「………あのさ。違うくってさ」
「え?何が違うの?」
「杙梛さんって、おまえにちょっかいかけるじゃない?口説かれるっていうかさ、まあ、そんな感じで」
「あ、うん…そうだね」
紫鶴さんもだけど、杙梛さんも会うと軽い口調で私を誘ったりからかったりする。
それに当初はどう対応していいのかわからず、おろおろしてはいたけど、もうすっかりそれも流すという方法を身につけていた。
二人とも悪い人じゃない。ちょっと冗談が過ぎるのと、女の人との浮名が多いだけで…
「だからさ。杙梛さんの店に一人で行かせたくないなって」
「…いつも、仕事で行くけれど?それに、もう慣れたわよ。あれは杙梛さんの挨拶みたいなものだし」
「それはわかってるんだけどさ。仕事のときはがまんするんだけどさ…」
少し肩を落とした隼人が甘えるように上目に私を見上げる。
「そんな意味じゃないのはわかってるけど、さっき『うれしい』って言ったツグミの笑顔が可愛すぎたんですよ。杙梛さんの前でその顔するのかなぁ。って思ったらですね…」
突然、隼人の口調が罪状を白状するように、ですます調に変わる。
「今日のそれって仕事じゃないし。というか仕事のときでも、普段から気持ちとしては、本当なら一人で行って欲しくないなって思っているわけですよ」
「っ…あのっ」
「俺は他の男にとられちゃわないか、って格好悪くも焦ってしまうわけですよ………」
私よりも少し大人な彼が少年のように、甘えるような声で可愛い話し方をする。
胸の奥がトクントクンと音をたてている。
「っていうことで、俺の我儘だと思って、ついて行かせて?」
そう言われてしまえば、私は断ることなんかできなくなってしまっていた。
微かに頷くと、隼人はすがるような表情を一変させて隠さない嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「じゃあ、杙梛さんの店に行った後、一緒に食事をとって映画でも行こうよ。せっかく夜の街まで行くのに杙梛さんの店だけじゃあもったいないだろ」
「え、あ…う、うん」
私が気圧されるように頷いてしまうと、隼人は小さくガッツポーズをして。
「やった、デートだ」
小さな声でそうつぶやいた。
私にはそれがしっかり聞こえて、隼人は策士でもある。なんて思いながら、その日の巡回をいつもよりも明るい気持ちで終えたのだった。
***
ということで!!
「ニル・アドミラリの天秤 帝都幻惑綺譚【尾崎隼人】」
感想という名のネタバレ含む、ただの独断的な感想です。独り言です!
ニルアドミラリ…ニルアド?タイトル覚えるまでにけっこう時間がかかりました。
15年で終幕せずに25の年を重ねた大正時代。という舞台の不思議な本が事件を起こすファンタジー?怪奇現象?(なのか?)要素の入ったサスペンス?です。
怪奇現象とか苦手ですが、このお話はそれほど怖くなかったです。
ストーリーに関してはキャラクター毎に少しづつ違って、関わる人によっても違うので飽きなく読みました。
紫鶴さん(鈴村さん)に惹かれて買いましたが
【尾崎隼人】にもっていかれました。私。
キャラクター選択画面で一番最初に名前が出てくるキャラクター。
だいたいのゲームで、この位置にいるキャラクターさんは、
王道の俺様とかしっかりカッコイイキャラクターの位置だと思ってました。
↑これにはあんまり惹かれないんです。
なのに、この人にはまりました!
キャラクターも王道といえば王道?
フクロウ(というお話の中での特別任務グループの名前)のリーダー的存在で正義感が強く、まっすぐな性格。
↑これにはやっぱりはあんまり惹かれないんです。
なのに…始めてみると、
なぜか一番最初に攻略できない。。。
一番最初に名前あって、攻略制限かかってるとか、不思議でした。
二番めにも、まだ攻略できない。
で、隠しルート以外の最後まで順番回ってこない一番目のキャラクターとなりました。
で、初めてみる。
と…
なんか話し方(声)もいいし、王道ストーリーだし
(王道キャラはひかれないけど、王道ストーリーは大好きなんです)
好意もストレートなのに、焦らしてくるし。
ということで、すっかり虜に。
(ココネタバレ 薄い文字 ドラッグすると読めます)
ヒトメボレですって!
しかも事件のあったせいで出会った一目惚れじゃなく、学生時代にヒトメボレしてた!!!
↑ここも好き
そして何が好きって。
ふだんリーダー的に「だよな」「じゃん」「だ」みたいなタメ口なのに。
口説くときが、
(ココネタバレ 薄い文字 ドラッグすると読めます)
やきもち焼いて
「無様だなー醜いなーと思うんだけど、俺としてはやはり気になるわけですよ」
って「ですます」で弱った顔で甘えて弱音はいてくるんです。
ということで、冒頭のショートストーリーになりました。
勢いで書いたので、呼びかたとかあやしいです。
(あと誤字も多いかも)
ということで、とっても個人的感想でした。
続編が出るそうなので、予約しましたー。
楽しみ。
あ、あと、このゲームはCEROD(17才以上対象)ということです。
そこが評判イマイチっぽかったけど(amazonレビューによると)
ときどき、キャラによってはここで?というのがありましたが…
あんまり気にせずどのキャラクターも楽しく遊べました!!