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遠足の翌日。


今日の放課後は、

遠足のクラス報告をするために、

再び学級委員が招集された。


彩と玲奈は隣同士に座り、

昨日の話をしていた。


「珠理奈のやつ、ほんましゃーないやつやな。」

「あれ?でも、同じサッカー部だよね?」

「せやけど、あんまり話さへん。」

「そうなんだ。」

「みるきーにでも手出したら、ほんまただじゃ済まさへんぞ。」

「え?」


わたしは、

さや姉の顔を伺い見る。



「もしかしてさや姉って、みるきーのこと…」

「ん?なに?」

「好きなんでしょ?」

「は、はぁ!?/// んなわけあるかアホ!///」


あからさまに動揺する彩を見て、

玲奈はふふと笑みをこぼした。



そっかぁ。

さや姉はみるきーのこと。

うん、お似合いだな。


みるきーはさや姉のことどう思ってるんだろう?


わたしは、

この二人がうまくいけばいいなって、

心の隅で願っていた。




学級委員会が終わり、

彩は部活のためにグランドに向かった。


玲奈はやるこもないので、

図書館に寄ることにした。



一時間くらい図書館で勉強したあと、

帰宅するために外に出た。



「あ、」



ふと右に目を向けると、

サッカー部が練習しているグランドを見つけた。



そっか。

ここで練習してるんだ。



玲奈はグランドに近づき、

フェンス越しに練習を見渡した。



あ、さや姉だ!


普段の制服姿とは違う、

練習着姿が様になっている。


さや姉はドリブルをしながら敵を交わし、

あっという間にゴール前。


横の味方にパスするフェイクを入れた後、

見事にシュートを決めて、

ゴールネットを揺らした。



す、すごっ!!


さすがサッカーの名門校だけある。


うちの中学のサッカー部との差は、

素人目から見ても歴然だった。



「あれ?どうしたの?見学なら入ってすれば?」

「あ、すみません!」


背後から声をかけられて、

慌てて振り向く。



そこに立っていたのは、

タオルを首から掛けて汗を拭う、

爽やかなイケメン風のショートカット。


格好からしてサッカー部だ。


玲奈は、いきなりの突風に髪を揺らしてハッとした。



「あれ?そのリボン、一年生?誰か見に来たの?」

「え、あ、いや、たまたま通りかかっただけです。」


玲奈は赤面し、ドモりがちに俯いた。



「あっれー!佐江ちゃんが女の子ナンパしてるー!いいのかなー??」

「は、はぁ!?違うから!」


佐江ちゃんと呼ばれたそのイケメンの肩に腕を回す女の人。


こちらもサッカー部のようだ。


長髪を一つにまとめたこちらの人は、

かっこよさと綺麗さを兼ね揃えた美女。



「チクってやろー!」

「あーもう優子うるさい!練習戻るよ!」



二人はじゃれ合いながら、

グランドに向かって歩いて行った。


その様子を呆然と見届ける玲奈。



な、なんなの、

このドキドキは…。


佐江と呼ばれたあの人。


目をしたその瞬間に目を奪われた。


玲奈にとっての初恋の相手は、

ふたつ上の、

サッカー部の先輩。

宮澤佐江。


一目惚れだった。





玲奈は焦がれるような胸のトキメキを必死に抑えて、

グランドを後にした。






その数日後。


今日も朝から彩の機嫌が悪い。



「あー!イラつく!最悪や!!」


「ど、どうしたの?」


隣の席に座る玲奈が、

恐る恐る彩の様子を伺う。



「どうしたもこうしたも!あいつ!松井珠理奈!」


彩が不機嫌になる時は、

決まって珠理奈のことが絡んでくる。


まだ登校してきていない、

珠理奈の空席をキッと睨みつつ、

彩は吐き捨てるように言った。



「あいつ最近練習来いひんのや!サボりやサボり!推薦でここ入ったくせに、なめとんのか!」


「そうなの?」


「まーまー。彩ちゃん落ち着きって。」


彩の後ろの席の美優紀は、

相変わらずなだめ役。



サッカー部の事情はよく分からないけど、

松井珠理奈とさや姉の犬猿の仲っぷりだけは顕著だった。



あいつ、

練習行ってないんだ。


どうせ、

女の子と遊びにでも行ってるんだろう。


本当にしょうがない奴なんだな。



同じ苗字ってだけで、

全く気が合わなそう。


できれば今後もあまり関わりたくない。


放課後、

そんな風に思いながら、

昇降口に一人で降りてきた。



「あれ?」


外を見て気付いた。


「雨じゃん。やば、傘持ってないよ。」


もうすっかり梅雨のシーズン。


自分の用意の悪さに飽き飽きする。



どうしようかな。


そう思って、

昇降口の庇の際で途方に暮れていた。


そんな時。



「傘、持ってないの?」

玲奈は、声をかけられ顔を向けると、

そこには珠理奈が立っていた。


「げっ!」

「げっとはなんだ。」


嫌そうな反応をする玲奈に、

珠理奈は苦笑。



「これ、貸してあげるよ。」


そう言われて、

自分の折り畳み傘を差し出してきた。


「え、あ、いいよ。別に。あんたが濡れちゃうよ?」

「平気平気。これでもスポーツマンだから、走ってけばそんなに濡れないし。じゃ!」


ニッと白い歯を見せてすぐ、

珠理奈は大雨の中に飛び込んで行った。



「え!ちょっと待って!どこ行くの!?」


そうだよそうだよ。

こいつサッカー部じゃん。


練習サボってどこ行く気?



珠理奈は立ち止まり、

びしょ濡れのまま振り返る。


「ま、そこらへん?」


「練習は?行かなくていいの?」


玲奈がそう聞くと、

あからさまに不機嫌そうな顔をした。



「あんたには関係ないっしょ。」


そう一言だけ言い放って、

走って行ってしまった。



玲奈は頭の整理がつかずに立ち尽くした。


珠理奈が貸してくれた折り畳み傘を握りしめながら。



~つづく~