- 水底フェスタ (文春文庫)/文藝春秋
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今日は時間が出来たので久しぶりにブログを更新します!!
辻村深月「水底フェスタ」。
読んだのが大分前になるので、ちょっと記憶が曖昧になってしまった所もありますが
この作品は感想を書いておきたいな、と思った一冊でした。
山あいの湖畔に点在する集落で形成される「睦ツ代村」は寂れた広大な田舎として
過疎基準に入る村のひとつです。
統合合併に活路を見出そうとしてきた近隣の市町村に対して
睦ツ代村が県内唯一の村として生き残ることのできたのはロックフェスの誘致に成功したからでした。
「ムッシロック」として全国にも名前が知られるようになった睦ツ代村は
県外からの移住者も増え、過疎地の村としては異例の豊かな村として存続しています。
主人公の高校生広海は「ムッシロック」が大好きな少年です。
ロックに傾倒し、音楽に対して「マニア」的な理解を誇る広海は
同じ村の人たちを蔑む気持ちを持っています。
村長でもある広海の父と自分だけが本当にこの「ムッシロック」の価値を知る人間だと。
同級生や狭い地域性の中で生きている村の他の人たちよりも
大人びた理性と感性を持っていると自負している
孤高な魂を持つ少年広海の前にある日現れたのが織場由貴美でした。
村出身の芸能人である美しい女性織場由貴美は広海を誘惑し
村の不正を暴いて復讐する手伝いをしてほしい、といいます。
織場由貴美に強く惹かれ、翻弄される広海は
村の秘密や人の心の裏側を知り、二人の結びつきはやがて悲劇に向かって
まっしぐらに進んでいくのです。
「自分をとりまく周囲を蔑み、孤高な魂を持つ10代の若者」という主人公は
辻村作品においては頻繁に登場しますが
その多くが少女であり、少年が主人公というのは珍しく思いました。
辻村深月が結婚し成熟したことも関係あるかもしれませんが
少年が主人公になったことで今までにはほとんど見られなかった
濃厚な性的描写がされていることもいつもと違うな、と思った点でした。
辻村作品ではデビュー最初の頃から思春期のせっぱつまった心理と
地方の息苦しさについて繰り返し描かれてきましたが
この「水底フェスタ」では「地方」に焦点が当てられ、深く切り込んでいる所に
辻村深月の新たなステージを感じさせられました。
また主人公の成長と共に地方とも「妥協」や「調和」が描かれることの多かった過去作品に対して
この作品では地方と「決別」し、前に進もうとする姿が描かれます。
ただ思春期という幼い反抗心ではなく、全ての真実を知り俯瞰する目を持った今
再び閉じられた世界の中で守り守られていくことをはっきりと否定するのです。
辻村深月といえば「太陽の坐る場所」が映画化されますね、
あれも「地方」に焦点を当てた作品でしたが。
辻村作品ではお得意の、小説ならではのトリックをメインとするこの作品が
まさか映像化されるとは思ってなかった。
どうゆう風に映像化するんでしょうか?
でもまあ伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」も上手い事映像化していたし
あんな感じでやるんでしょうか?

