『人生を狂わす名著50』三宅香帆を購入
題名のとおり本についての本です。長い間、一冊も読んでないな~と思っていたので目についたのかもしれません。(わたしのような人多いのでは?)
帯にある"Xで超バズ!"とか"京大時代"は、手に取ってみようかな、と思わせるいわゆる宣伝文句ですが、掴みとしてOKでした。(実際、掴まれた)
巧みなマーケティング戦略でこちらの気を引いてほしい。そういう誘導されたい欲?だってあるはずです。(本を読もうとする意志が弱まっていたので、誰かに強く勧められたかった?)気づかず通り過ぎるよりいい?
背表紙の紹介文 (そのまま書き出しています)
この本は、
京大大学院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂うよね」
と思う本ベスト20を選んでみた。《リーディング・ハイ》」
というタイトルで「天狼院書店」のウェブサイトに掲載され、
2016年、年間はてなブックマーク数ランキングで第二位となり、
多くの反響を呼んだ記事をもとに書かれたブックガイドです。
「狂う」って「世界の規範から外れる」ことだと思うのですが、
どうしても社会や世界に流されることのできなくなる本たちを選んでみました。
とのこと。
そうか…ブックガイドという言葉はわかりやすい。「旅行案内」「トラベラーズガイド」など。旅案内するのと同じように本を案内する。イメージしやすい。すぐにこの本がどんな本かわかる気がします。(こういう仲介業的な役割は様々なジャンルで今後重宝され、需要が高まるのではないだろうか)
本屋さんのスタッフが選ぶというフレーズも悪くない。本屋大賞とか一番近く接している人が選ぶ本に気が向いてしまうのも事実。
それにしても一冊の本になるにも経緯(いきさつ)というものがあるようです。動機(きっかけ)は?目的は?使命は?どれだけ時間をかけたか。作者の熱量はなど。本にだって投げかけられる質問は多い。本ができるまでに意味深さがあったりする。
構成として、対立させたテーマが冒頭に提示されたり。
愛したい vs 愛されたい
中村うさぎ『愛という病』について
わかりやすさ vs むずかしさ
小林秀雄・岡潔『人間の建設』について
途中で(ここだよ、ここここと) 《人生を狂わすこの一言》の決まりフレーズが出てきたり。
《人生を狂わすこの一言》
私たちは誰だって本当は父親を殺し、母殺しを夢見ている子供部屋の奴隷たちだったのではないでしょうか。
中島梓『コミュニケーション不全症候群』について
太文字がふんだんに使用されていたり。
ああっわかる、わかりすぎる。頭を抱えてしまう。
結局、自己愛や虚栄心や承認欲求のにおいに敏感なのは、同族嫌悪ゆえである。他人に苛々しているようで、その実は自分のエゴのにおいにうんざりしているのだ。
p.37 J.D.サリンジャー『フライニーとズーイ』について
読者側としては、紹介していく本が名著と予想できるので、あとはそれらについて作者の解釈がわかりやすく文章化されているかが最大の関心事になります。
その点、そのハードルを低くする配慮が本の構成上なされてあるようです。
・ 各章で同じパターン(形式)を採用しているのである種の読みやすさがある。
・ また紹介する一冊一冊(50冊)について、コンパクト(6~8ページくらい)な内容でまとめられている。
・ はじめに超簡単な言葉(愛したいvs愛されたいなど)で二項対立させているのでとりあえず入りやすい。
・ 各本の刺さった文章を「人生を狂わす一言」として紹介していくので、本の要点をそのまま教えてくれる。ぼぉっと読み流すことがない。
・ ポイントを太文字で示してくれる。
のような点が挙げられます。
概してこの本は誘い込みがうまい。
これは思うに自分だけでなく名著をもっと皆に知ってもらいたいという熱量があるからでしょう。
別に紹介している本を今後読まなくても、概要を教えてくれるので今の時代のニーズにぴったり。
少し違うかもしれませんが、食レポを連想してしまいました。
作者の各本に対するリアクション。それを読むのがこの本の醍醐味。
なぜそうリアクションしたかを巧みに文章化していてそこにこの本の読み応えがあると思います。(感動を他人に伝えるのがどれほど難しいか。それは技術がないとできないことです)
他人の感情の動きを伴いながら批評を読めるのでウケた?そういうのは共感しやすいと思います。
オススメです。
★★★★★
(おわり)