『22世紀の民主主義』―選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる―

成田悠輔

 

を読む

 

 

 

データに基づきながら未来民主主義構想、展開してみた、的な内容(と思う)

 

 

帯に書かれた

『言っちゃいけないことはたいてい正しい』

は、結構過激な気もする。

 

 ただし重要な事を何も言えない社会的空気も健全ではない。

 そして要となる懸案を取り上げないまま国を不幸にしてしまうことは現役世代としてあまりに無責任と言える。

(将来、悲惨な結果を被る者たちにフェアではない)

 

 言いたいことは本質を突くよ、ということだと思う。

 

淡々と綴られていながらも、しれっとラディカル路線。

 

 

 

○ 世界を牽引してきた資本主義と民主主義の両輪

 

  (従来の基本的な仕組み)

・ 資本主義は、競争を促し、勝者と敗者をつくる。

    →自然と貧富の差を生んでしまう。格差を生む構造。

 

・ 民主主義は、敗者(貧しい人)を救う(セーフティネットのような)政治システム。

    →選挙によって、社会バランスをとる。

 

 ところが近年、世界がおかしくなってきた。

 

 

 むしろ資本主義は原理通り。

 

 現在危機的状況にあるのは、民主主義の方である。

 

 ・人口統計の偏り(バランスの歪)から起こる老人びいきの政治が敷かれてしまっている。

   →従来の選挙制度の限界

 ・SNSによるデマの蔓延(デマによる世論の形成)

 ・民主主義であるほど経済成長できなくなっていることが判明。

 ・民主主義が瀕死の現状(資本主義はむしろ正常)

 ・民主主義の決断力・即断力のなさ

など

 このような感じで

 民主主義の限界をデータ・統計で証明したあと、

 妄想気味に民主主義にメスを入れていこうとする試みの本

 

 

 

キーワード

 ・地方政治から変える(若者の意図的な人口流入など)

 ・人や政党ではなく政策に投票(液体民主主義、分人民主主義)

 ・デジタル民主主義

 ・無意識データ民主主義

 ・アルゴリズム・AI活用

 ・エビデンス重視

 ・政治家不要論(批判され役はネコに)

などへの期待

 

 

民主主義へのカウンター・メジャー(実践)

 

・闘争(一人一票ではなく…/政治の成果主義の導入など)

・逃走(民主主義のタックスヘイブン化など)

・構想(選挙も政治家もいない民主主義は可能か?無意識、データ、アルゴリズム、AIに置き換える)

の三本立てで構成

 

 

評価しずらく

かなり未来に向かってアクセル踏み込んでいます。

未来への投射率が高い分、評価が難しい。

でも、

”22世紀の~”系ですからこれくらいでなければタイトルにそぐわないのでしょう。

 

 

 

 (目に留まった語録

 

民主主義的な国ほど、今世紀に入ってから経済成長が低迷しつづけている。p.46

 

 

何をすべきか政治家はわかっているんだ。すべきことをしたら再選できないこともね。p.56

 

 

平時でも有事でも、張るべきところにすばやく張れない民主国家の煮え切らなさが浮かび上がってくる。p.74

 

 

凡事の日常感覚に忖度しなければならない民主主義はズッコケるしかないのかもしれない。p.75

 

 

極端な民主制から…独裁は生じる。p.78

 

アリストテレス『政治学』

 

 

紀元前古代アテネ自体が民主主義の失敗の最初の例。デマゴーグ扇動政治家。衆愚政治。

 

 

 

☆☆☆★★(星三つ)

 

(おわり)