『地球がまわる音を聴く』は、58年前のオノ・ヨーコさんの詩集から
ウェルビーングは、心身ともに健康の意。
テーマは、パンデミック以降の時代をいかに生きられるのか。
ウェルビーイングをアートの視点からアプローチしていきます。
全16名のアーティストが参加。
↓必ずついてくる解説(読めません)
〇今やアートとテキストは切っても切れない関係にありそうです。
”コンセプト”が大いにアートとかかわっていることも影響しているのでしょう。
(少し内容を抜粋してみます)
ヴォルフガング・ライプ
50年近くにわたって、牛乳、花粉、米、蜜蝋など生命の源を連想させる素材を使った立体作品やインスタレーションを制作。
自然由来の素材を使うことに制作意義を見出しているようです。
(こういうことは解説を読まないとわからないです)
《ミルクストーン》
浅く削られた白い大理石板の表面に、毎朝牛乳を流し入れるもので、表面張力の緊張感とともに一日のエネルギーや生命について考える。(解説より)
何万年もの時間を内包した大理石
など読むと鑑賞に深みが増す。
↓その隣の壁に詩のようなテキスト。
花粉を集める
2020年――3月、4月、5月に
来る日も来る日も、
何週間も、タンポポの草原に座り
この上なく集中して
激しく
時間も、我も、身も心も忘れて
信じがたく、思いも寄らない
世界の危機と混乱のただ中で
ひどい病にかかり、死にゆく数多くの人びと
新しい疫病?
600年前のような疫病がふたたび起こるなんて
とても想像できなかっただろう
今、この私たちの生活のなかに、そばに
それでもなお、危機は大きければ大きいほど
人類に新しい未来をもたらし
どこかの場所へ向かい
ほかの何かを見つける手助けをしてくれた
想像しえたものの彼方に
私たちは見つける
新しいありようと生き方を
私たちが望むものと
私たちが人生に望むもの
大切なことと
そうではないこと
慎ましさ
謙虚さ
自分自身とほかの人たちに対する
世界に対する
自然に対する
宇宙に対する
まったくちがう関係
自分自身と世界への異なる願い
新しい未来の新しいヴィジョン
メッセージ色が強いようです。
テキストを(詩という単体ではなく)インスタレーション全体の一部としてみるほうが空間芸術として嵌る気がします
↓ もう一作品
タンポポやヘーゼルナッツなどの花粉を使ったインスタレーション。花粉は一年のうち数カ月、小さなガラス瓶半分から一本程度しか集まらない。マイクロメートル単位の細胞には、それぞれの繁殖のための遺伝子情報が凝縮されており、その希少さゆえに凝縮された生命の重さを感じます。(解説)
部屋に入ると素材のリアルな存在感を感じとれた…かな?
↓ エアン・アルトフェスト作
パンデミック中に(13ヶ月間かけて)制作とのこと
細密に描かれた部分に目を奪われてしまいます。
それは画家の拘りや労力を自然と感じ取るからだろうか。
過剰な情報量を提示されてもすぐに全てを認識できません。脳内で補足される部分ができるため認識論的な意味合いで抽象的なのかもしれません。
ギド・ファン・デア・ウェルベ作
・ 動画作品『世界と一緒に回らなかった日』
・ 北極点で地球の自転と逆に24時間回転(太陽と影が移動していきます)
・ 地球の自転に影響されない
・ 身体能力が高いことを活かしたパファーマンス
・ 作曲は本人らしい
・ 詩や音楽に興味があるという
・ 映像に直感を与えるためか
この方の作品
ちょっとおバカっぽいところが好きです。
↓ 堀尾貞治 作
・定年退職するまで三菱重工神戸造船所に勤務(普通の会社通い)
・芸術家と交流したり、個展を開いたりしていた
・日用品を素材にしたものが多い
・習慣の持つ迫力
・一定のスタイル持たない/多様さ/ 多作
・可能性をもっとも感じさせる芸術家と形容できそう
(連想したこと)
ブラックジャックのようなプロでも治せないものを治すアマチュアになりたい。
byリリー・フランキー
余談ですけどこういうのに感銘を受けことはあります。
ブラックジャックの場合、完全に裏社会の(プロより凄腕の)アマチュアですが。
↓ 金沢寿美
在日朝鮮人三世としての家庭環境やアイデンティティへの問いを起点にしつつ、個人と集団的課題との振れ幅を作品化(~後略)
『新聞紙のドローイング』
↑近づくと新聞の記事や写真といった時事問題がうっすらと見える。
気になった部分だけを残して新聞紙を(10Bの)鉛筆で塗り潰していく。それらの新聞紙を何枚も繋ぎ合わせカーテン状にしたのが上記の作品。
制作時間は、世の中が寝静まった夜10時から午前3時頃までとのこと。一見開きを塗りつぶすのには3日かかるそう。(解説)
結果、新聞紙が暗く重たい印象になっていますが……
肉眼では見えない
星まで見えてくるような
感覚に襲われました(解説)
とのこと。
一瞬、夜空が見える気がした、と。(宇宙だったかな…?)(オーディオ解説)(記憶違いだったらスミマセン)
個人の閉じられた空間から世界や社会を俯瞰し、そこから言葉を選び取ることによって、社会を個人化する行為とのことです。(解説)
↓ ツァイ・チャウエイ (世界各地の密教に影響)
壁に掛けられた色違いの抽象画は、『5人の空のダンサー』
使用された顔料は、中央アジアからシルクロードを経てアジア全域へ広がったもの。これは密教伝来の要所であった莫高窟の壁画にも使われていたもので、5つの色は、チベット仏教において行者を悟りに導く女神である5人の知恵のダーキニーを表している。(解説)
台に敷かれた金属製の作品は、『子宮とダイヤモンド』
密教に見られる両界曼荼羅の形式を踏襲したもの。それは宇宙の全体を表すと。(解説)
鑑賞者も宇宙の一部であることを実感できるだろうか?
日本や欧米出身以外のアーティストの感性はあまり馴染みがないためか、そのローカル性のためなのか神秘性を感じることが多いような?
↓ モンティエン・ブンマー
『自然の呼吸:アロカヤサラ』
タイのアーティスト。
タイの伝統医療の薬草を塗布、内部に置き、臭覚にも働きかける。
呼吸を通した”存在”へのアプローチ。
肺みたいなものがぶら下がっていて少しキモイ。
この中に入り呼吸、重力を意識しながらと言うが…結局、入らなかった。
なぜか東南アジア出身のアーティストっぽい作風だなと感じることができました。
西欧に留学し、最先端の現代アートを学んだ芸術家らしいですが、ルーツとなる文化、伝統、宗教が血肉のように作品に影響されるのでしょう。
(余談)
日本人がピカソのような絵を描いても西欧人には日本人が描いたとなんとなくわかってしまうものらしい…
オノ・ヨーコ作
上の日本語訳
風のための絵
任意の種を入れた袋に穴をあけ、風の吹くと
ころにおく。
1961年夏
上の日本語訳
部屋の中を見る絵
キャンパスの真ん中に目に見えない位の小
さな穴をあけそこから部屋の中を見る。
1961年秋
何年か前にも書きましたが壁に書かれた詩との遭遇は好きです。
わりとざっくりとした内容になってしましたが…
(おわり)