秘めたおもいを掬い取るのが小説のやさしさ。
タブーな関係から生まれた愛を描いた短編小説集でした。(11編)
カバー裏(背)表紙の説明文
どうして恋に落ちたとき、ひとはそれを恋だとわかるのだろう。(中略)言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、ひとは生まれながらにして、恋を恋だと知っている―
世間から認められず秘めたままの想い…
この地上にどれくらい存在しているのだろう…
(個性ある11パターンのうちの7)
・ 片思いの同性愛(もはや一般的と言える関係か)
・ 姉弟愛(老人夫婦と思っていた姉弟愛)
・ 自己防衛のため殺人を犯したまま秘密を守る二人の愛。
・ 復讐と三角関係(高校時代の先輩夫婦と後輩)
・ ペット視点からの飼い主への想い
・ 遠い記憶に思いだす誘拐犯との愛
・ 夫になりそうな(婚姻届けに印を押したが役所に届けていない)同居人の職業を知らないままの関係
など。
(感想1)
正直な”気持ち”を優先させてみると周りの決め事に対し反目が生まれます。
人はいつからか決められた世界の決め事との狭間に摩擦を抱えながら生きているもの。
そういう経験が読者にある限り、この物語に出てくる人たちの気持ちにだって寄り添うことができるのでは…(レベルの違いはあるにせよ)
”関係そのもの”が従来の社会では受け入れられにくいと、摩擦のニュアンスも複雑になることでしょう。
そういうもののために文学が最後の受け皿になります。
(どちらにしても、人生の局面での認識の仕方と行動がその人の人生を形成してゆく…)
(読み心地)
・挑戦的なテーマを扱っているとは思えないほどカジュアルな読み応えになっています。
・ユーモアさやシリアスさがところどころに差し込まれており、メリハリがつけられています。
(感想2)
(毎回、似たようなことを書いているかもしませんが…)
小説には「こんな関係だってありかも…」と思わせるよさがあります。
またその関係の紹介。
時には使命と言っていいのかも。
(感想3)
不思議なやさしさというものが作品にあるものはいいような気がします。
「こういう優しさもあるんだな」という学び。
(本の題名について)
ところで、ポラリスとは北極星のこと――
天体のあらゆる星々はポラリスを中心に回転しています。
まさに夜空の中心です。
もしかしたら、誰かが北極星になってしまうことが恋…
もしかしたら、誰かが夜空の中心になってしまうことが恋…
人生で、夜空の中心になる人を見つけてしまう、なんて運命を感じさせます。
運命とは安定することなのでしょう。
(まぁ、歯が浮いてしまうような表現と取る方も多い?かと予測されますが…)
この表現が比喩として成立可能か直接、北極星に問いかけてみる?
ただ、今回の短編のように北極星となったひとたちとの関係が一般社会に認められるものでなかったら…
そこにポラリスという孤独なイメージが重なる気がします。
恋をすることにより孤独を感じるようになるとはパラドックスですが、それも恋愛の味わいでしょう。
小説の形をとってはいますが、
様々な関係を扱った恋愛詩と言ってもいいかもしれません。
(おわり)