『天皇の国史』(竹田恒泰)を購入。
”天皇”という日本特有の存在を通して日本史を読みかえす。
手に取ったのはそんな意味合いから。
ありそうでなかったのではないだろうか。
・650頁越え
・膨大な量の参考資料
・最新科学の知見からも検証された歴史
教科書に書かれている歴史と比較してみたくなるかも。
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67頁まで読んだけれど、まだ三万八千年~一万二千年前くらい。縄文時代にも入っていない!(岩宿時代)
101頁まで読んで、やっと縄文時代が終了/ 分析的。
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読了。
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特に印象に残ったところをまとめたり、抜き出してみる。
・ 後期旧石器時代・岩宿時代(約三万八千年年前)~縄文時代・弥生時代; 大陸から日本列島への移動だけでなく、日本列島から大陸への移動も同様に多くあった。教科書で習った知識では、大陸からの一方向性のイメージしかなかったが、実際は双方向性のある往来だった。日本列島には三万年代にすでに高度な文明(現時点では、世界最古の磨製石器)や海洋資源があり大陸とも広く頻繁に交易していた。(一万9000年前は海水面が百メートル以上も低かった。)
文化は、高いところから低いところへ流れる法則を主張。これにより人の流れを判断すべき、には一定の説得力がある。
・ DNA分析によって判明したこと: 現代日本人に多く含まれる(約40%)縄文人系Y染色体DNAは大陸の人々には見られなかった。母系ミトコンドリアDNA;M7a…、父系Y染色体DNA; D1a2a…など、かなり詳細な分析結果を列挙。日本人とは何者なのか?ルーツついての好奇心が湧いてきます。
そこからわかったことのひとつ。
日本人は最初から日本人だった。(中略)「岩宿人」こそ「最初の日本人」だったのである。p.31
・ 柳田國男の提唱した「方言集圏論」p.96: これをもとに縄文語を復元した学者を紹介。 言語は時代と共に変化していくものだが、都市部から離れた辺境の言語を調べていくと、変化前の言語の状態が推測できる。(新しい言葉は都市部から広まっていき、元々あった古い言葉が辺境に残る傾向があることから)
・ 神武天皇が実在していたとしたら、「神武東征」はいつであったか。おそらく0年前後(世紀)。『日本書紀』にある難波の状態を説明した記述と現在の気候学・地質学の分析結果に符号するところがあった。
九州での大噴火が神武東征を促した、とする説; 九州を出立し、瀬戸内海を横断した後、近畿(大阪湾)に到着。当時の大阪平野は深部まで浅瀬の海だった。同時期の潮の満ち引きによる湾の状態と『日本書紀』に書かれた神武天皇一行が上陸する状況が一致する。
神武天皇が難波にお着きになる際の『日本書紀』の記事に「方(まさ)に難波の岬に至るときに、奔潮(はやなみ)有りて太(はなは)だ急(はや)きに会ふ(速い潮流があってとても早くついた)。因(よ)りて名(なづ)けて浪速国と為(い)ふ」とあるが、これは神武天皇の船が満潮時に開口部から潟に入り込む潮流に乗ったことを描写したものと思われる。その後一行は船で白肩津(しらかたのつ)(枚方(ひらかた)の津)まで至っている。しかし、長浜氏によると、このように速い潮流に乗れたのは、開口部が狭まり大阪平野が潟となったこの時期に限られるという。~「長浜弘明説」p.170
「浪速」から「難波」に。
・ 「記紀」を全否定する学者に対して。
非合理な記述があれば、その部分は信じないのが学問的に正しい態度である。もし神武天皇が137歳まで生きたというのが信じられないなら、その部分は無視すればよい。非合理なことを根拠に導き出された結論は非合理であるから、「137歳まで生きた」という非合理な記述を信じて導かれた「神武天皇は存在しない」との結論は、論理的には非合理である。その結論に辿り着くまでの間に一度「137歳まで生きた」という部分を信じなければならないからである。これは嘘つきが「自分は嘘をついている」と言った時のパラドックスと同じである。(中略)
このように、非合理な記述を取り上げて、神武天皇の存在そのものを否定するのは、文献批判の手法の初歩的な誤りである。p.157
ロジック遊びというかパラドックス遊びのような文章ですが、…
神話の全てがフィクション(作り話)ではないとはわたしも思います。
地質学や気候学、建築学、音声言語学、DNA解析、遺跡発掘、放射性炭素年代測定法、資料研究など…、あらゆる最新技術と知見を活用して正解に近づいていければ…
新しく発見された分析結果と照合する客体性までなくしてしまったら非合理を通り越してナンセンスな態度を敷いているように見えます。
・ 八紘為宇; 神武天皇の「神武天皇建国の詔」。「八紘をおおいて宇(いえ)と為さむ」を取っていう。
意味は、
日本列島を私たちの家とすること。(中略)~「私たち日本人は皆家族であり、日本列島は私たち日本人の家である p.151
ひとつにまとまった国としてのはじまり。争いが絶えなかった状態がようやく終結。民は、大きな国の下での一体感を共有することに。
・天皇(の価値)について。
天皇は神だから尊いのではなく、「天皇」という日本民族の伝統的な地位が「神聖である」という思想が歴史的に共有されてきたことに重要な意味がある。したがって、「現人神」は天皇が神なのではなく、天皇の地位が神聖であるという思想を意味している。天皇は人間である。p.105
ぼんやりしていたイメージを明文化してもらった気がします。
人によっていろいろな考え方があると思いますが、この定義には思わず瞠目。
これならいろいろな考えを最大公約数的に拾えるというか…、大半の日本人に支持されるのではないでしょうか。
昔、外国のニュース(BBC?)が、街頭インタビューで、”We asked four people to sum up the Japanese Emperor in one word?"(天皇をひとことで表現すると?)と道行く(四)人に尋ねていたのを思い出しました。
・ 「心」
・ 「"Era"(時代)」
・ 「日本の顔」; 「When I see him on TV, I feel close to home(テレビでお顔を拝見すると、ホッとします。)」とも。(今上上皇がまだ天皇陛下の時)
・ 「"Soul of Japan"(日本の核) 」
がその回答でした。
偶然通りかかった人(若者含む)たちが答えていましたが、「それって、つまり国体…のことじゃ…」
・ 「天皇」の仕事について。
毎日、国民の(平和の)ために祈ること。(世界の人々の平和ために祈ること)。歴代天皇は毎日、欠かさずに祈ってきたという。
信仰と伝統が一体になったものへの崇高さを感じます。(博愛?)
天皇は現人神ではなく、最高神官(オラクルマスター)だということを改めて確認。
※
天皇陛下の現在のお住まいである皇居は、元江戸城であり元軍事施設ですが、江戸時代までは低い壁で敷地を囲っただけの京都御所にお住まいだった。(歴代天皇は、千年以上も無防備な御所に住まわれた。)
それでも、御所の壁を乗り越えたり破壊して犯罪行為をする者はいなかった。平和と安寧を毎日祈っていただける「天皇」という(有難い)存在に危害を加えようなどとは露にも思わなかった。
このことも世界の常識とかけ離れていると言います。
(つづく)