詩人ではない人の書いた詩
を定期的に読んでみたくなります。(たとえば、別の業界で活躍している人の詩など。)
出版物の帯に書いてあるような文言でも詩に見えるなら。たとえば、…
今、日本の男は
あまりに軟弱である。
なぜ軟弱なのか?
それは連むからである。
一人で歩かないからである。
”孤”となりえないからである。
”孤”を知るにはどうすればいいか。
さまようことである。
旅をすることである。
『大人の流儀』 伊集院静
詩の風格が出ているもの…
詩らしさが出ているものならなんでもいいのです。
なにか「おおっ、詩を読んでいる。」という体験をしたくなります。
マンガを読んだり映画を観ている時に出会う詩もあります。
たとえば、
『ファイブスター物語(ストーリー)』(永野護)より。
はるか彼方の
星団史で
偉大なる女王が
空間と時間に
残した言葉を…
あなたに贈りましょう
はるかな太古の
魔導王国フォーチュンの
言葉で伝えられて
おりますが…
私と私は、何も知らない子供
外と自分を知らないお姫様…
無力・無知の
風と時よ
傷も残さぬ風のせせらぎ
存在することのない時間の神々
瞳の中で――
”それ”は種子をはこび
書物の中で実を成し
光は守護者と空に消え
闇の子孫は未だ地に残し…
歴史は宙でダンスをおどり
その血を水に溶く
希望は空間において
やがて小さな炎をあげるだろう
『ファイブスター物語(ストーリー)Ⅲ』
もうひとつ。
気を抜くな!
今しばらく・・・
運命の糸
決してゆるめては
ならず!
『ファイブスター物語(ストーリー)Ⅵ』
”運命”をうまく表現したものを読むと、”詩”だな~と思うことがあります。
運命のように大げさになりがちな観念でもマンガというメディアを通してなら容易に受け入れることができそうです。
というか、…
物語とは(そのもの自体が)、運命と自由意志、そして感情の表現であるというのが適切な表現に思えます。
ドラマチックな物語の進行途中に読む詩となるので、詩が運命を表現していてもそこに没入していくことができます。
※余談
(考察)
逆に、”運命”が伴っていない詩を、”詩”と呼んでいいのだろうか?…
…という疑問も出てきます。
そもそも人は、詩ではなく”運命”に興味がある。
運命に惑わされ惹かれるから詩が生まれたのかもしれません。
詩の母は運命(+それに対峙した人の感情)…説。
どうなのでしょう。…
そこは人によって意見が異なると思います。
まぁ、マンガのストーリーに沿って現れる詩を読んでいてそんなことを感じました。
あと、…
こうした媒体には、ハードルが高くとっつきにくいテーマでも一般読者との近接性(アクセサビリティ)を高めてくれる構造があるようです。
お堅い分野も多くの読者用のメインテーマにしてしまいますね。
次に。
『ハンター×ハンター』に掲載されていた詩です。富樫先生の自作だろうか?
さあ乾杯しやう
乾杯しやうぢゃないか
人というものどもに
善人も悪人もいつの世も人はくり返す
膿むにはあまりに長く
学ぶにはあまりに短い
時の螺旋上
だからこそ好く欲し
好く発するのだらう?
命など
陽と地と詩で満たされるほどのものなのに
『HUNTER×HUNTER』
はやく続きを描いてくれとファンから嘆願されていそうなマンガ家の詩になります?
(間違っていたらごめんなさい。。。)
いや、もはや読者からも諦観されているレベルだろうか?
先の『ファイブスター物語(ストーリー)』も忘れた頃に続きが出ています。
こういうマンガって最近、多い気がします。
とはいえ、作品の質を下げるくらいなら作家さんには十分休みをとってほしいし。
でも、長期休載を狙っている〇〇先生のようなマンガ家の思うつぼではないか?
というジレンマも生まれます…
まぁ、しょうがないです…マンガ家さんあってのマンガです
『ファイブスター物語(ストーリー)』もそうですが、せめてわたしが死ぬまでには完成させてほしいな…
(なんだか愚痴か嘆きみたいになっちゃいました。)
詩についての感想は、…
人間の闇属性性というか、そんなものまで含めた人間観を神目線で祝杯しているような感覚を覚えるでしょうか。(こんな適当で(m´・ω・`)m ゴメンなさい…)
ただ本職以外の才能に触れる機会をつくってくれたのはうれしい。
意外な発見はたのしいですから。
特にマンガ家は、絵+言語が基本なので、かなりマルチな才能を備えていそうです。
絵よりも文章が書けないと一流の漫画家になれないと聞いたこともあります。(あと体力と何か(絵ではない)の三つ(思い出せん汗)…ジャンプの偉いさんが言ってました。
特に詩は作者が本当に思っていること感じていることが出てしまうものですし。
こういう職業の人のガチな詩は読んでみたいですね。
別にマンガ+詩に限らず、ですが。
次へ。
長期連載中の『ワンピース』から。ブルックの唄。陽気な海の唄のようで哀しい唄でもある。
ビンクスの酒
ヨホホホ ヨホホホ×4
ビンクスの酒を 届けにゆくよ
海風 気まかせ
潮の向こうで 夕日も騒ぐ
空にゃ 輪をかく鳥の唄
さよなら港 つむぎの里よ
ドンと一丁唄お 船出の唄
金波銀波も しぶきにかえて
おれ達ゃゆくぞ 海の限り
ビンクスの酒を届けにゆくよ
略
漫画『ワンピース』
”悪魔の実”を食べたためその実の不思議な力で
全身骸骨になっても生きている”ブルック”。
文字通り、永遠の音楽家になった彼ですが、今は亡き海賊仲間を偲んで歌っています。
死んだことを自虐ネタにするくらい楽天的な彼ですが、永遠の霊魂という寂しい存在。
明るいものに見えて、本当の背景には全然違うものがあるという。
世の中には、こういうタイプの唄もあるということですね。
※余談2
―観想―
漫画のなかのストーリーに挿し込まれた詩は構造的に見ても興味深い。
というのも、
フィクションなので、舞台設定は思いのまま。
(よって)現代の状況に縛られることもないし、
現実の日本を軽々と超えることができる。
その自由に決定できる枠組み(創作世界観)に、謳われる詩となります。
構造としては、入れ子状の二重構造。
更に虚構(フィクション)でありながら現実に響くものがベターですね。
この構造があれば、今はほとんど書かれなくなった様々な趣の詩が復活してもいい。
時代精神(Zeitgeist)に反映される精神性や芸術傾向はあります。
冒険詩やロマンス詩、ヒューマンドラマ詩、社会風刺詩(恋愛詩)など。
マンガや小説の世界では自由自在です。時代も空間も超える。
その意味で、時代劇(歴史)物だったら、たとえば、人気マンガ『キングダム』。
中国、春秋戦国時代(BC3)が舞台。秦の始皇帝(嬴政)が中華統一するまでのサクセスストーリー。
巫女のような女剣士が、不思議な舞踏をしながら、下の詩を詠み上げる。
想像を絶する戦いに次ぐ戦い。限界を超えたぎりぎりの命のやり取りの束の間の夜営で、兵士たちの頭上からひっそりと謳われる。
戦士達に
祝福を
人の行くは千辛の野
剣は折れ盾は砕けた
すでに五兵はなく友も倒る
しかし人は歩を止めぬ
嗚呼
深き闇に 人は勇躍した
万苦の帳が上がり慈雨が地に満つ
その刻 人は神韻を聞いた
蛙鳴の中に 燕雀の羽音に
遠き雷鳴 水にゆるる月
そして 冷たき土に
嗚呼
戦士の先に
祝福を
戦いゆく者に
煌煌たる光を
安寧の明かりを
―――
蛙鳴(あめい)
五兵(矛・盾・弓…のこと)
羌瘣(きょうかい)の詩。『キングダム』
BC時代、中華を舞台にした戦時の人々の心理とシンクロして読むことになる?
神韻さえ聞えてくれば、マンガの偉大さがわかる…
人間の想像力はすごいとも。
とりあえず、今回はここらへんで〆ます。
(つづく)