絶望を忘れた夢の美しさ――すまない、夢に逃げ込んでしまいたい

 

 

 もうわたしには眠った涙だけが流れた

うす暗い森の肉体へ夢みてく―

それは蝶の―湿った鱗ぷんだったか

はたまた冷えすぎた夜の小川だったか―

 

 どこか深く皮膚の水脈に成り果てて

無意識の土溝へと深く伝いあいながら

事象をすっかり忘れ去っている草原の胸板に

空虚な辺境があるはずもない

 

 眼を閉じた瞬間 現れ出ずる金色の月の精!

その国へ連行し眠りの塔の独房へ幽閉しておくれ

時を知らせない時の鐘はどこにあるのだろう

 

 銀色の鱗ぷんをばら撒くその音に

満ち溢れる永遠の国のはためきを夢み怪しみながら

たったひとりの慰めの種をそこへ落としたい――