親のケンカほど、
子どもの心をざわつかせるものはない。
特に、それが泣きながら感情的になる母の姿だったときには。
ボクが5歳くらいの頃、
長崎にある祖母の実家に家族で帰省していたときのことだ。
その晩、
父と母がケンカを始めた。
泣きながら母が感情的に訴えるのに対し、
父はテレビを見ながら振り返りもせずに短く返事をする。
その態度に母がさらに怒り、
台所からコショウの入れ物や調味料が次々と飛んできた。
調味料が飛び散り、
床がめちゃくちゃになる中、
母の泣き声が部屋に響く。
それでも祖母は介入せず、
笑いながら
「またケンカね」
と静かに見守るだけだった。
その祖母の姿を見て、
ボクは少しだけ安心した。
”おばあちゃんが焦ってないなら、大したことじゃないんだ”
と幼いながらに思ったからだ。
それでも、
親のケンカは子どもにとって不安の種でしかなかった。
母が泣いている姿、
父が冷たく返す姿。
そのたびに、
ボクはただケンカが終わるのを待つしかなかった。
家の中がピリピリした空気になると、
八つ当たりされないように親に話しかけるのを避けた。
けれど、
子どもには親に頼らざるを得ない場面が多い。
親に気を使いながら過ごす日々は、
今思い返しても辛いものだった。
あの頃の経験が、
今のボクの性格にも影響を与えていると思う。
親の顔色をうかがいながら生活していたからか、
今でも他人の目を気にしすぎるところがある。
それでも、
親を責める気持ちは全くない。
ボクは成長して、
今では父とお酒を飲み交わし、
母とは夜中まで語り合う関係だ。
親のケンカが多かった記憶があっても、
親子の仲が悪くなったわけではない。
それでも一つだけ確信しているのは、
親のケンカは子どもにとって良いことが一つもないということだ。
トラウマになる人もいるだろう。
子どもたちに安心して過ごせる環境を作るためにも、
我が子の前ではできるだけケンカを見せないようにしたいと思う。
