それは、ある冬の夜だった。
 

寒さが身にしみる…なんて言うけど、

本当にしみたのは、ATMの画面だった。



通帳残高「¥0」



何度見返しても、ゼロ。
 

再読み込みしても、ゼロ。
 

機械のせいにしたかったけど、ゼロ。



心臓がキュッとなった。手が震えた。呼吸が浅くなった。
 

 

「え、まって。なんで?……え、え、まって」



ATMの前で独り言が止まらない。
 

近くに人がいなかったのが救いだったけど、

もし誰かいたら、たぶん完全に不審者だったと思う。



■「自分は、まぁまぁ稼げてる」と思っていた
私はフリーランスで、コンサル業とSNS発信をしている。
 

売上だけ見れば、月に50万〜80万くらい。
 

 

 

「すごいね!」「安定してるね」と言われることもあった。



でも・・・現実はまったく安定していなかった。



この時期、売上はそれなりにあったのに、
支払いが立て込んでいて、振込のタイミングもズレていて、
そしてなにより、私はお金の流れをまったく把握していなかった。



だから、ある日突然、「通帳ゼロ」というホラーが起きたわけで。



■赤っ恥の瞬間:クレジットカードが切れなかった日
通帳がゼロになったのは、
ある意味では「当然」の結果だった。

だってその数日前、人生で初めて、
カフェでクレジットカードが切れなかった。



「残高不足のため、決済できません」



店員さんに静かに言われて、頭が真っ白になった。
 

後ろには行列。
 

「ちょっと他のカードで…」と口ごもりながら、
手が震えて財布から次のカードを出す。

それも、切れなかった。

もう、顔から火が出るってこういうことなんだと思った。
 

耳まで熱くなって、声が裏返りそうだった。

結局、現金でなんとか払ってその場をしのいだけど、
心の中では叫んでた。



「もうイヤーーーーー!!!」



■この出来事のあと、やっと気づいた「自分の癖」
「私、なんでこんなことになったの?」



帰宅して、手帳を見て、通帳を見て、支払い履歴を見て、ようやく気づいた。

私には、ある“癖” があった。

それは・・・
「お金のことを見たくない時は、“なかったことにする”」



・通帳の残高、見ない
・請求書の金額、チラ見で閉じる
・カードの利用履歴、「あとで確認しよう」と言いながら忘れる
・収入が入った瞬間、「とりあえず今日は頑張ったご褒美」とか言って外食




その結果、
「何に使って、何が残ってるのか」なんて、
正直、まったくわかっていなかった。



■お金との関係=自分との関係
この出来事のあと、私は思った。

お金って、単なる数字じゃない。
 

「自分が自分をどう扱ってるか」が、まるっと表れるものなんだと。

私が「見たくない」と思っていたのは、
数字じゃなくて、自分のズルさや、先延ばし癖や、無計画さだった。



つまり、「自分のダメな部分」を見たくなかった。
 

 

 

だから、お金の流れも見えなくなっていた。



■“自己理解”が、お金との関係を変えてくれる
それから私は、決めた。



・毎週1回、10分だけ「お金を見直す時間」を作る
・月の予算を立てる前に、「私はどうしたい?」と気持ちを確認する
・使ったお金を「浪費」と責めるのではなく、「そのときの自分の選択」と認める




たったこれだけでも、
お金に対しての感覚が、少しずつ変わっていった。



怖くて逃げていた“自分の癖”を受け止めたら、
お金との距離も縮まって、
「ちゃんと私の人生を生きてる」って実感が増えてきた。



■通帳ゼロの夜は、私のリスタートの日だった
今思えば、あの「通帳ゼロ」事件がなかったら、
私はずっと、自分のお金の癖に気づけなかったかもしれない。



そして、もっと言えば・・・
自分のことも、ちゃんと理解しないままだったと思う。



失敗は、確かに恥ずかしいし、怖い。
 

でも、ちゃんと見れば、そこに「自分を知るヒント」がある。



あの日のATMの画面を、私は忘れない。
 

そして、こう言える。



「あれが、私の人生のリスタートだった」 と。



あなたも、「見たくないもの」の中にこそ、本当の自分がいるかもしれません。
 

恥ずかしさの奥にある「癖」を見つけてあげてください。
 

きっと、それがあなたのお金との関係を変える第一歩になります。