リビングのソファに、一人うずくまっていました。
あたたかいはずの家で、体がどんどん冷えていくのを感じながら、
私は通帳を見つめて、声を出して泣きました。
残高は、たったの3万7千円。
数日前に納品したばかりの請求書は、まだ未払い。
来週にはスタッフへの給与支払い。
家賃もある。仕入れもある。
「どうしよう、どうしよう」
何度もつぶやいていたけれど、もうどうにもならない。
あのとき、ようやく気づいたんです。
経営者なのに、私は数字から逃げていた。
正直に言います。
私は、お金の管理がとにかく苦手でした。
というか、「見たくなかった」んです。
売上はあった。
月商100万、200万、うまくいけばそれ以上。
お客様の反応もよくて、紹介も増えていたし、SNSのフォロワーも伸びていた。
なのに、なぜか手元にお金が残らない。
なんとなく不安で、通帳は開かない。
経費も「たぶん大丈夫」と思い込んで、カードの引き落とし明細は流し見。
でもそれは、
「見たくない現実を見ないことで、安心したかっただけ」でした。
現実は、残酷なくらい、無関心を許してくれなかった。
その月、資金繰りに追われながら、ふとスタッフとのLINEを見返しました。
彼女は、2人の子どもを育てながら、在宅で私の会社を支えてくれている。
毎月、何十件ものメール対応、事務処理、時にはお客様対応もお願いしていた。
「来月もよろしくお願いします😊」って
そんな風に送ってくれる彼女に、私は何も言えなかった。
通帳を見たあと、真っ先に浮かんだのは
「これじゃ、彼女の生活も守れない」っていう、
申し訳なさと、恥ずかしさと、情けなさ。
「私は、なんて無責任な経営者なんだろう」
「好きを仕事にしてるとか言って、現実から逃げてただけなんだ」
胸が張り裂けそうでした。
「売れてるっぽいから大丈夫」
「お客様から感謝されてるから、うまくいってる」
「応援されてる=健全に回ってる」
…そんな風に、私は「感覚」で経営をしていました。
でも、経営は“感覚”では回らない。数字でしか守れないものがある。
どんなに想いがあっても、
どんなに努力していても、
数字が赤字なら、事業は続かない。
経営者は、感情で動いてもいいけれど、感情だけで生きてはいけない。
これは、私自身が身をもって知った真実です。
あの夜を境に、私はお金との向き合い方を変えると決めました。
まず、週に1度、資金の流れを見直す時間をつくること。
売上、入金予定、固定費、変動費、支払い日…。
今までは「ざっくり見てた」数字を、すべて見える化するようにしました。
苦しかったです。
最初の数週間は、通帳を見るだけで心臓がドキドキして、
「また残高減ってる…」と落ち込む日もありました。
でも、数字を“味方”にするってこういうことだったんだと、少しずつ思えるようになっていきました。
通帳を開くことが、責任を背負う行為になった。
でも同時に、未来をつくる行為にもなったんです。
私のように、
「売上はあるのに、お金が残らない」
「数字が怖くて見られない」
「経費の感覚がふわっとしている」
そんな女性経営者は、本当に多いです。
でも、それは恥ずかしいことでも、ダメなことでもありません。
ただ、“見直すタイミング”が来ただけ。
あなたが今日から通帳を開くこと。
その1歩が、会社を守り、スタッフを守り、
何より、あなた自身の未来を守ることにつながるんです。
私はもう、
自分の無知のせいで、誰かの生活を危険に晒すような経営はしたくない。
だからこそ、こうしてこの記事を書いています。
お金のことを真剣に学び、仕組みを整え、
「見て見ぬふり」は、私の中で終わらせました。
これからは、
「数字を知っているからこそ、感情を大切にできる経営」
を選んでいきたい。
そして、あの夜の私のように泣く女性経営者を、1人でも減らしたい。
もし今、「数字が怖い」と思っているなら、
それは変わるチャンスかもしれません。
勇気を持って、最初の1通帳を開いてみてください。
あなたの中に眠っていた、本当の経営者の顔が、きっとそこから目を覚ますから。