「あれ? こんなに楽しい時間があったんだっけ?」

中学3年生の夏前くらいから、

急に毎日が楽しくなった。
 

理由は明らかだった。

 

 

 

――春の大会を最後に、

地獄の部活から引退したから。

 


「あの部活生活は、まるで少年院だった」

ボクが入っていたバスケ部は、

全国大会に行くようなレベルではなかった。

 

とはいえ、

全国大会に行くチームと

いい勝負ができるくらいではあった。

 

 


そのため、

練習はやはり地獄のように厳しかった。

 

朝練、放課後練、休日練習。
 

ミスをすれば怒鳴られる。
 

水なんて

ほとんど飲ませてもらえない時代だった。

 

 

 

先生の「気合が足りない!」という怒声。


先輩の「走れ!」という指示。
 

毎日、体も心もボロボロだった。

 

「これが終わるなんて、考えたこともなかった」

 

 

 

そんな生活が、

春の大会を最後に、

突然終わった。
 

3年生は春で引退し、

その後は受験に集中する――
というのが、

この学校のルールだった。

 

 

 


「勉強どころじゃない!自由が楽しすぎる」

でも、

ボクは受験勉強どころじゃなかった。
 

長く続いた「地獄」から

解放された瞬間、
目の前に広がったのは “自由” だった。

 

 

 

学校が終わったら、

すぐに帰ってテレビゲーム。
 

部活がないから、

夜更かししても問題ない。
 

 

 

「明日も練習か…」

という憂鬱がなくなったことで、
毎日がとにかく楽しくて仕方なかった。

 

 

 


「勉強も、ほどほどにやれば十分」

それでも、

定期テストの成績は悪くなかった。


220人中30位以内。

 

 


派手に目立つわけでもないけど、

それなりに上位。

 

「このくらいで十分だな」

 

勉強へのやる気がないわけじゃないけど、
それ以上を目指すほどの

モチベーションはなかった。
 

 

 

そのため、

校外の模試や競争テストでは、
成績が振るわないこともあった。

 

でも、

それでいい。
 

「無理をしなくてもA判定なら、十分じゃないか」

 

 

 


「頑張らなくても大丈夫だと知った」

部活に縛られていたころ、

ボクの毎日は
「やらなきゃいけないこと」

で埋め尽くされていた。
 

「頑張る」のが当たり前だったし、
「頑張らなきゃダメだ」と思っていた。

 

けれど、

いざ部活を引退してみると――
 

「別に頑張らなくても、大丈夫なんだ」
ということに気づいた。

 

 

 

学校生活も、

勉強も、

日々の暮らしも、
頑張らなくても、

それなりにうまくいく。

 

そう思えたとき、

心がすっと軽くなった。

 

 

 


「嫌なことがなくなるだけで、人生が変わる」

部活を引退しただけで、

世界が変わった。
 

大きなストレスから解放されたことで、
学校生活も、

勉強も、

友達との時間も、
すべてが楽しく感じられるようになった。

 

 

 

何か一つでも嫌なことがあると、
そこに引っ張られて、

すべてが嫌になる――
 

そんなメンタルの癖に気づいたのも、

この頃だった。

 

だから、

無理をしすぎないこと。
 

自分を縛るものから解放されること。
 

それが、

人生を楽しむためのカギなのかもしれない。

 

 

 


「楽しいって、こういうことだったんだ」

部活に縛られていた頃は、
「楽しい」

が何かすらわからなくなっていた。

 

だけど、

今は違う。
 

 

 

「自分のために使える時間」

が増えたことで、
ボクはやっと、

 

自分の人生を生き始めた気がする。

 

 

 

「頑張らなくても、人生って案外うまくいくものかもしれない」