前回の続き。
無視される、
容姿をバカにされる、
言葉の暴力に時折加わる物理的な暴力。
ボクが受けていたイジメは、
約3ヶ月ほど続いた。
当事者のボクにとっては、それよりもずっと長く感じられたが——。
そして、
イジメは突然終わった。
それは単に運よく終わったわけではない。
ボク自身が、
行動を変えたからだった。
ある日、
いつものように容姿をバカにされ、
嘲笑われた。
クラスメイトの男子3人が、
次々に言葉を投げつけてくる。
「なんでそんな顔してんの?」
「キモくね?」
笑い声。
ボクの肩を叩く手の感触。
ただうつむいて耐えていた。
何も言い返せず、
悔しさを飲み込むしかなかった。
でも、その日は違った。
涙が溢れ、
視界がぼやける。
長時間続き、
もう耐えられなかった。
気がつけば、
ボクは全員を突き飛ばしていた。
驚いて倒れる男子たち。
そのうちの一人——主犯格の男子を押さえつけ、
身動きできないようにした。
「え……」
ボクはそこで初めて、
自分が何をしたのかを理解した。
反撃なんて、
生まれて初めてだったから。
この先、
どうすればいいのか分からなかった。
しかし、
倒れた彼らは、
何も言わなかった。
主犯の男子も、
それまでバカにしていた2人も、
ただ黙り込んでいた。
そして、
ぽつりぽつりと
「ごめん」
と謝ってきた。
それが心からの謝罪ではないことは、
すぐに分かった。
反撃してくると思わなかった相手に反撃されて
怖かったのだろう。
謝るしかない状況になったから、
謝ったのだ。
この出来事で、
ボクは2つのことを学んだ。
ひとつは、
やられっぱなしではイジメは終わらないということ。
もうひとつは、
力で黙らせたところで、
何も解決しないということ。
10歳のボクには、
イジメへの正しい向き合い方なんて分からなかった。
このたった数ヶ月の経験は、
ボクの中に深い溝を作った。
「目立ったらまたイジメられるんだ」
勉強でも、
スポーツでも、
どんな形であれ、
突出すれば誰かを刺激する。
その結果、
また標的にされるかもしれない。
だったら——
「できるだけ目立たないように生きた方がいい」
そう考えるようになり、
ボクはどんな勝負事でも、
わざと負けるようになっていった。

