幼い頃、
雨の日の公園で小さな命に出会った。



その命が、
ボクにとって今でも忘れられない教訓を残してくれた。







その日は雨が降っていたけれど、
いつものように近所の公園へ行った。



友達と二人だけの公園に響いたのは、
小さな鳴き声。



音のする方へ駆け寄ると、
雨でふやけたダンボール箱の中に子猫が一匹だけ入っていた。



ダンボール箱だけでなく、子猫も雨でびしょ濡れだった。



その小さな命を前に、
ボクたちはどうしていいか分からなかった。







雨に濡れた子猫を守らなければと、
ダンボールごと、公園横の側溝の下に移動させた。



雨風を防げる場所を見つけて安心したけれど、
それ以上に何をしてあげたらいいか分からなかった。



家に急いで戻り、
パンと牛乳を持ってきた。



小さなスプーンで牛乳を口元に運んでみたけれど、
子猫は反応しなかった。

その体が震えているのを見て、
どうしていいか分からない不安が胸を押しつぶした。



飼っても良いかを親に相談したけれど、
当然のようにダメだと言われた。

社宅アパートではペットは飼えないと分かっていたけれど、
それでもどうにかしてほしかった。



無力な自分が悔しくて仕方なかった。







翌日、
公園へ向かったボクたちを待っていたのは、
もう動かなくなってしまった子猫の姿だった。



友達と二人、呆然として、ただただ立ち尽くした。



子猫が捨てられていた公園の隅っこに、
小さな穴を掘り、
子猫を埋めたその手の感触を、
今でも忘れることができない。







あのとき、
もっとできることがあったかもしれない。



もっと大人に相談すれば、
もっと違う選択をしていれば、
子猫は助かったのではないか。



そんな後悔が、
大人になった今でも胸に残っている。



幼い頃のボクにとって精一杯の行動が、
命を救うには十分ではなかった。



だからこそ、
大人になった今、
命の重みを知り、
それを守るためにできることを選びたいと思う。



命を守る選択ができる自分でありたい。



そして、
あの日の子猫の命を無駄にしないためにも、
今できる最善の行動を心がけていきたいと思う。