企業経営の難しさは、財務諸表等の数字だけでは推し測ることができないことにあると思います。

 我々が扱っている労務の分野ですと、より潜在能力の高い人を採用するリクルーティング力であるとか、採用した後の労働者の人材育成力であるとか、労働者の労働意欲いわゆるモチベーションを維持・向上させるための賃金設計であるとか、社内の人権問題であるセクハラやパワハラ等を予防する危機管理能力であるとか、いろいろ考えられます。

 その様々な企業の経営力の要素となりうる事項を分析して高めていくために必要なことは、インターネットで調べたり専門書で調べてわかる次元の話ではないわけです。

 例えば、せっかく採用した人材が早期に退職してしまう損害は数字で容易に測れませんが、その人を採用するのにかかった経費、募集の広告代とか、採用するのに面接官や試験官で投与した人材の仕事のロスとか、平均在職年数からその早期退職者の在職年数を差し引いた年数分の会社の純利益に貢献できたであろう額を損失とみなした数字等を数字化して、危機感を持つことが大切です。

 そして、危機感を持ったら、いかに早期退職者を出さずに離職率を低下させれるかを考えて、退職者の退職の原因を研究していき、原因となりうる要素をつぶしていくというように企業努力を続けることです。

 そこで、パワハラやセクハラが原因で退職していく人が多いのであれば、セクハラやパワハラが起こらないような人権教育を社内でやるとか、セクハラやパワハラをするような人を採用しないように、採用過程で人の素養を見抜くための選考方法を考えるといった具合にです。

 企業の経営は数字や過去の歴史だけで予見・分析できない奥の深さゆえ、常に弱点克服との闘いなのです。