料金未払いで携帯電話が止められそうになり、多忙の合間を縫ってびあんち号を飛ばし、auショップへ行く。対応した女性は名札と喋り方で異国の人だと分かった。しかし若干の訛りがある程度で、日本語を流暢に話す。
「身分を証明するものをお持ちですか」と聞かれ、僕は財布がないことに気づき「免許証も保険証もないです」と答えた。しかしこの時点で、財布がない=金がない=払えない、の図式が頭の中で成り立たず、住所と生年月日を口頭で伝えた。何とも頭の悪い話だ。そして支払い金額を言われた時、僕はそれが出せないことに、ここでやっと気づく。「2ヶ月分が未納ですが、いかがなされますか」と聞かれ、僕はばつが悪そうに「2ヶ月分を払いたい気持ちは山々なのですが、いかんせん財布がないので出直します」と席を立った。
僕にとって財布が手元にないのは日常茶飯事で、どうせ家かどこかにあるだろうと、さほど焦っていなかった。しかし彼女は一大事だと思ったようで、驚いた声を出して僕より早くイスから腰を上げた。神妙な顔で「どこかで落とされたのですか」と聞かれ、僕はへらへらしながら「大丈夫です。出直します」といった。そこで彼女は僕に「どうも申し訳ございません」といったのだ。手数をかけて、頭を下げるべきは僕なのに。美しい精神を持った異国の彼女。どうかこの薄汚い国でその心がけがれませんようにと、そう思いながらびあんち号にまたがったが、そう伝えてやればよかったと少し後悔している。
「身分を証明するものをお持ちですか」と聞かれ、僕は財布がないことに気づき「免許証も保険証もないです」と答えた。しかしこの時点で、財布がない=金がない=払えない、の図式が頭の中で成り立たず、住所と生年月日を口頭で伝えた。何とも頭の悪い話だ。そして支払い金額を言われた時、僕はそれが出せないことに、ここでやっと気づく。「2ヶ月分が未納ですが、いかがなされますか」と聞かれ、僕はばつが悪そうに「2ヶ月分を払いたい気持ちは山々なのですが、いかんせん財布がないので出直します」と席を立った。
僕にとって財布が手元にないのは日常茶飯事で、どうせ家かどこかにあるだろうと、さほど焦っていなかった。しかし彼女は一大事だと思ったようで、驚いた声を出して僕より早くイスから腰を上げた。神妙な顔で「どこかで落とされたのですか」と聞かれ、僕はへらへらしながら「大丈夫です。出直します」といった。そこで彼女は僕に「どうも申し訳ございません」といったのだ。手数をかけて、頭を下げるべきは僕なのに。美しい精神を持った異国の彼女。どうかこの薄汚い国でその心がけがれませんようにと、そう思いながらびあんち号にまたがったが、そう伝えてやればよかったと少し後悔している。