近くに老夫婦が住んでいる。70過ぎに見える主人のほうは気難しそうで「何やってんだ全く。どんくさい」と舌打ち交じりで嫁に毒づいている姿を何度か見たことがある。その女房は彼より一回り若く、かんしゃく起こされても眉一つ動かさなかった。亭主関白のようでいてその実、手のひらで転がしているのは夫人のほうなのだろう。
スーパーから帰り道で二人が前を歩いていた。買い物袋を一つずつ持ち、空いた手を繋いでゆっくりとした歩調はおそらく主人に合わせている。常に手持ち無沙汰の僕だが理想像だ。追い抜かず、風景にいそしんだ。