気違い部落 デリケートな単語が並ぶタイトルにまず惹かれた。ゴダールの作品は邦題を変えたというのに、渋谷実のこれはそのままというのはネームバリューがそうさせているのか、フィルムの状態はすこぶる悪く細切れ状態だった。興をそがれたがシネマヴェーラが悪いわけではない。何度も中断して声を荒げる観客もいた。筋違いや、無闇やたらに怒ることは滑稽だ。

気違い部落の村民たちも滑稽だった。古くから伝わる風習を守り、それは時代錯誤で国の法律よりも重きを置かれていて彼らをがんじがらめにする。部落十四世帯を束ねる親方に背いた者は村八分にされた。狭く、痩せた土地にしがみつき、伝統の全てが悪というわけではないためそれに従い、現状維持に努める。

森繁久彌が務めるナレーションは登場人物と会話もしてそこに存在し、しかし姿を見せることはなく第三者の視点として透明人間であるかのようだった。俯瞰して見れば大概のことはおかしい。欲をかいて醜い彼らとその集落を笑うが、最後のナレーションと村八分にされた男のセリフは辛らつだった。日本のどこかというこの部落は日本のどこでもあるというような、もっといえば世界のどこでも、時代も問わず、当てはまる。