余命幾ばくもない父親に二人の娘がいて、姉妹が生まれた間には戦争があった。戦争を知る姉の節子は「新しいこととは古くならないこと」と説き、忠実な生き方は犬のよう。それを知らない世代の満里子は古いものを嫌い、奔放なライフスタイルは猫のよう。無職の夫を内助の功よろしく節子は支え、働かない義兄を疎ましく思って満里子は家に寄りつかず、その亮助は猫を愛でていた。
満里子というか高峰秀子が素晴らしい。コメディエンヌだとは知らなかった。キビキビした動きと顔芸に惚れる。小鼻にしわを寄せ、口角を下げ、低い声で小説風に、もしくはナレーション風に、歌と音楽も交えつつ、会話を弾ませた。節子というか田中絹代は恐ろしい。自らに非は全くないという姿勢は周囲を息苦しくさせる。姉妹のコントラストを徹底してるとすれば、さげまんを地でいく節子に対しておそらく満里子は至高のあげまんだろう。
二人が面と向かって会話する。二人が同じほうを向いて前後奥行きをずらして座る。そのカット、構図で小津安二郎は安心感さえ与えた。笠智衆の存在もそうで、演技の上手下手を超越した、たたずまいが稀有なオポジションなのだと最近分かった。気がした。本作は随分前に見たことがあった。その時は小津作品を立て続けに鑑賞し、その2作の間にどれだけの年月があったか忘れたがしかし常連組は揃って老け、笠智宗の娘の婿を演じた男は笠智宗の同級生になっていて、またいつもの彼に、行きつけの店のような居心地の良さを感じた。