楊貴妃 溝口健二のカラーは新鮮に感じた。モノクロで培った陰影や奥ゆきは反映されつつ、絢爛豪華な極彩色が華やかだった。中国唐朝の宮廷にいる人間はエキゾチックな衣装や装飾品を身にまとい、栄華が見てとれる宮殿はいくつかの部屋を捉えてつつがなく立体的。

時の皇帝・玄宗に近づこうと、亡き妻への思いが消えない王に対して女を献上しようと安禄山は王環を差し出した。玄宗が梅見に興じている時「物言う花もきれいですよ」と進言してそばにいる王環に目を向けさせようとするが目論みは外れた。取り入ろうとする視点から映す。その夜は逆の視点から、自分の部屋に女がいることを知った玄宗がその顔を確認するまで引っ張り、ようやく双方が合致する。

兄の要望で台所で顔を黒くして働くため田舎から都に出て、そこから成り上がって王環は楊貴妃と名を変えたが一族の道具であることには変わりなかった。楊貴妃を寵愛するあまり玄宗は彼女の親族に地位と金を与え、それが国民の反感を買うことになる。自ら身を引くことを決めた楊貴妃の人生は、終始周囲に翻弄されるものだった。悲恋に終わった二人だが死を間近に控えた玄宗が楊貴妃の天からの声を聞く。死後の世界を肯定するラストは性善説に近いように思えた。察するにロマンチスト。