処女の女子高生・紀子、その妹・ユカ、彼女らが出入りしたサイトを仕切るクミコ、二人の父・徹三。誰かしらの語りが常に入り、シナリオは相当に分厚かったのではないかとその量を汲んだ。詩人でもあるらしい園子温によって操作された4人の語り口は一様、聡明で早熟の高校生のような若さを感じた。演出にセンスを感じさせないがそれを補う才能。彼にとって「自殺サークル」は会心作だったのか、それを踏襲し本作でも「あなたとあなたの関係は」と問いかけ、個人と集合体を見つめる。4人の目から多角的に浮かび上がるもの。
自転車で10分という好立地にもかかわらず三軒茶屋中央劇場は初めてだった。石油ストーブの上にやかんが置かれてそれが喫煙所にある。レトロでノスタルジックな、哀愁漂うたたずまいと雰囲気が最高だ。歴史を感じさせる映画館だけあってイスの座り心地は最悪で、本作の2時間半という長丁場がきつい。寄せては返す「あら、帰りたいですねぇ」の波。
それでも途中退席せずにエンドロールを確認してから後にして心地良かったのは、劇場が気に入ったからということだけではない。余韻の段階で「世にも奇妙な物語」の8話分程度という印象は覆された。徹三によって作り出された上っ面だけの理想の家庭に反旗を翻し、ネットで知り合ったクミコを頼って紀子を家出する。その1年後にユカも同じ道を辿る。体裁ばかりを気にしていた徹三だったが、少ない手がかりを探って家族の再生を試みた。一方、紀子とユカはレンタル家族を経営するクミコの下につき、そこに価値を見出した。家庭の在り方はあくまで縁どりであり、人という字は支え合って形成されるもので、何と繋がるかもしくは何に属するか、巡らすところは多岐に渡る。