善悪の判別が難しいのは今に始まったことではなく、社会で生きる以上、曖昧なボーダーラインで悩み続けるのは人間の宿命かも知らん。警察の存在意義把握を絶やすために正義を貫くことだが、きれいごとばかりでいられないのも事実。警察官の正義の定義はばらばらで、彼らの主張は各々正しくもあり、間違いでもある。そんな中、権力にとりつかれた警視クランが唯一絶対悪として、それを支点に気官たちの正義への苦悩が映し出される。実際にあった事件に基づいていながらこんな人物を描くとは。
同じ手口の強盗事件が続き、死者は述べ9人になった。警察は何に換えても捕まえたい。借り出所のみのシリアンにはめられた警視ヴリンクスは殺人の片棒を担がされ、真実を語るか黙殺するか迫られる。強盗犯の情報を握るシリアンの駆け引きに、結局ヴリンクスは屈した。出世争いで負けたくないクランはさらに手段を選ばない。周囲を省みない唯我独尊ぶりは見ていて羨ましくもある。そんな彼の、長官の座を狙う人間とは考えられない、ファンタジー映画かと思わせる過ちで事態は急変した。
ナラタージュ的に場面と別のセリフが交錯し、ヴリンクスとクランのコントラストを浮き彫りにする。それぞれの末路だけでなく彼らの周辺にまで目をやると、やはり何が正しいかなんて分からない。諸行無常がノワールか。