診察台に座るや否や「痛みは全くございませんでした」と僕は言った。神経を削られたくない 一心で。どうやら免れたようだ。そうすると気分的にも余裕ができる。ここの歯科助手は美人揃いだと気づいた。

麻酔が効くまでの間、退屈だろうと雑誌を持ってきた彼女は、たしか先週、僕にカメラを向けた女性だ。その時も良くしてもらい、もしや好意を持っているのではないかとすぐ勘違いする。太い眉毛のその尻は上がって力強く、大きな目で微笑みかける。最新器具をきょろきょろ見たりあれこれ触ったりしていると、近づいてきて説明してくれた。

僕に仮詰めを施した彼女は、どこか勝ち組然としていて、おそらく恋愛などでは苦労していないだろうと、そんな顔立ちをしていた。切れ長の目に迷いが見えず、産毛が確認できるほどに顔を近づけて、その目に写る、口を最大限に開けて歪んだ自分の顔を覗く。

治療が楽しくなってきた。ガムは禁じられたがしかし。