着信者に驚いて思わず電話に出てしまった。それは5年半付き合って2年前に別れた女だったのだが、メモリーに残していたのはもしかかってきても無視するためであったにもかかわらず。罵声が飛び交うひどい最後で、まさかまた喋る機会があろうとは、動揺したのは否めない。
先日の結婚式
にその女性も呼ばれていた。僕とその時の新婦はジャグジーズ創設から携わり、僕が先の電話の女性を引き入れ、除名する。その女性が式に招待されることを知って、僕は祝うよりも行くのが面倒になっていた。結局、諸事情で欠席することも事前に分かったのだが、それでも面倒な気持ちが勝る。その新婦とは親友のつもりだった。僕は友人が少ないが、その少ない友人は親友として、例えば人を殺めたとか騙したとか、罪を犯したとしてもそばにいる所存でいる。交友関係の広い新婦はその女性ともいまだに仲が良く、それは一向に構わないのだが、僕としてはどこかで優劣をつけてもらいたかったという心情があり、おそらく同じテーブルにつくことになったであろう式が、少しだるかった。
話を戻して電話。その結婚式のことを聞かれた。誰が来たのか、二次会はどうしたのか、問われたことを話す。二度と喋りたくないと思っていたが、案外スムーズに言葉は出た。向こうはもうわだかまりがないようだ。女は強い。おしはかったところ、ジャグジーズとしてまた仲間で遊びたいのだろう。しかしそうは問屋が卸さないことが僕の度量の小ささを端的に表している。ご免である。
そんな小さい自分に愛想を尽かされたのが結果なのか、まだ諦めずに僕が彼女としている人との、今の段階でいう最後の晩餐
が甦る。100歩が50歩を揶揄していた。